ゆったりとした県道を車を走らせているとよく道路脇に石材店があります。そこには大抵ひとつくらいは「これは間違っているよなあ」と感心させる石材が寂しげに、しかし堂々とたたずんでいます。
墓だけを彫ることに飽きた石材店主の暴走か。はたまたフリーメーソンの陰謀か。発生の原因は分かりませんが、それらを繰り返し見ているうち、私の中にはこの暴走する間違った面々を愛でたい、という意識がわいてまいりました。
というわけで、石材ふぁん第1回、本日は主に千葉県・茨城県で撮影した石材を簡単に分類しつつ紹介いたします。これを読んでくださった方の一部でも石材に興味を持っていただければ、幸いに思います。
#
■動物万歳
一番ポピュラーに見ることのできる石材が、動物あるいはそれに準ずるものを模したもの。いつもは可愛らしく飛び跳ねる動物も、石材店にかかれば、カチンと硬直し、哀愁すら漂わせるものになります。
●妄想たぬき
たぬきですね。目線がちょっとイッてしまわれており、不穏な感じがしますが、下腹部近辺も含めてまっとうにたぬきだと思います。
●たぬき型標識
こちらはもう少しデフォルメされたたぬきです。これも幾分目がイッてしまわれていますね。手に持っている板には墓碑銘とか書くんでしょうか。
●チワワ型傘立て
可愛らしいですね。チワワでしょうか。室内犬の代表格のチワワとはいっても、こちらは石材ですから外で雨ざらしの運命でしょう。
普段は怖いヤンキーが雨でずぶぬれになった捨て犬を拾うシーンがよくありますが、
「おー、よしよし、こんなに雨でずぶぬれになっちまって…」
と、雨ざらしのこのチワワ像を拾ったりすると「ちょっと頭がおかしい人」と判断されてしまうので気をつけなければなりません。
●巨大かえる(子供付き)
冒頭にも出したかえるです。巨大なかえる。ためしに私も横で四つんばいになってみましたが、断然こちらの石材ほうが大きかったです。こんなかえるが実際にいたら恐怖に慄いてしまいそうですが、石材になるとなんとも柔和な刺激になります。写真ではよく見えないかもしれませんが、子供を背中に乗せているのもほほえましいです。
それにしてもこちら、背後の送電塔とのコントラストが非常にいい優秀な動物石材です。勝手に評価されても困りますか。
●畏怖
猿、ですね。「どういう人が買うのか分からない度」がMAXです。
夜道を歩くのが不安な華奢な女性でも、これを肩にのせて歩けば、なんとなく防犯になりそうな気がします。
●過剰な親しみやすさ
ゴリラでしょうか。こちらは今回撮影した石材の中でも最大級で、高さが約2mあります。丸々としてかわいらしいですが、ここまで大きいものを家にかざったりすると、「大丈夫かしら?」と近所の人に疑われること必至です。
■キャラクターもの
動物の次に多く見られるのが、有名なキャラクターをそのまま石材にしたものです。単なる模写も多いですが、いろいろ誤った解釈なども見て取ることができ、自分のキャラクター感を覆してくれたりします。
●ドリブル。
よどみのない光沢、ほれぼれとするような曲線。ファン層が広いと聞くこのキャラクターですが、さすがに石材にまでしてしまうファンの方がいらっしゃるとは思いませんでした。
●虚空
良く言えば「黒目がち」、ニュートラルに言えば「虚ろな」、悪く言えば「気持ち悪い」なんとかチューです。テレビではたいそうな人気者ぶりですが、この石材は千葉のはずれで雨ざらしで汚れてしまっていて、なんとなく共感を覚えたりします。
●飛び出せ!青春
あの有名なキャラクターも石材店にかかればこのとおりです。ロボットだけに量産されています。が、
この目は幾分やばいのではないでしょうか。お父さんが子供を喜ばせようとして買って帰っても、たぶん子供は泣く。
●男の沽券
小さい。
■モアイ
キャラクターものの派生として位置づけられるが、元から石材というだけあって、石材化親和性の高いモアイ。ポピュラーでシンプルな素材だけに、「適当にうろおぼえで作っちゃいました!」というものが多いのが特徴です。
●男前
モアイなんだが、なんとなく違和感がある。
そうか。普通のモアイより男前なんだ!
鼻の感じからも夜が強そうな印象を受けますので、愛されモアイと命名します。
●だだもれ
今回の撮影中、最も衝撃的だった物件。
・カクカクしすぎ。
・穴開いてる
・胴長い
・下の双子穴は何?
様々な疑問は出てくるが、有無を言わさぬ説得力。
ブバーと口から水を出してみたら、さらに説得力が増すでしょう。ついでに下の双子穴からも水が出てくれば無機的なモアイがなんだか有機的に!
■総括
というわけで、めくるめく石材ワールド、いかがでしたでしょうか。気になった方はどんどん購入して、石材テーマパークを作ってみては?ちなみに一体数万円〜数十万円します。
じゃあねー。
(本稿は
オモコロに寄稿したものを許可を得て再編集の上、掲載したものです。)