コーヒーを香るということ
近所の喫茶店で買った豆で自分で淹れるコーヒーがあまりにも好きすぎるので、遅ればせながらサーモスの携帯マグを購入しました。
これがまた噂に違わぬものすごい保温性能でして、朝入れたコーヒーが昼だったらまだまだ「アチッ!」ってなるくらい熱い、夕方になったら「ンフッ」という感じでまだまだ結構熱い、というほど。フタを開けると感じられる強い香りと、飲むと染み渡る酸味と苦味を求めて、嬉々として毎日毎日丁寧にドリップしたりしています。
先日は実家に帰る用事があったので、その際にも「せめて最初の1日くらいはうまいコーヒーを飲みたい!」ということで、この携帯マグにいつも通り丁寧にコーヒーをドリップして、ふわふわと香る素敵な香りを鼻からズコーっと吸い込みながら蓋をキュッキュと締めました。
で、途中途中で蓋を開けてちびちび飲みながら空港に向かったのですが、水筒歴が浅いもので、手荷物検査で引っかかるという認識がなく、そのままカバンに入れて検査場を通過しようとしたら、20代くらいの女性係員に呼び止められてこう言われました。
「水筒の中を見えるようにしていただけますか?」
ああ、そういえばペットボトルもちゃんと検査されるしな。分かってない男で申し訳ない、と素直に携帯マグの蓋を開けてその女性に渡します。
すると、係員の女性、蓋の開いたマグを左手にとって右手でファッ、ファッと香りをかぐような仕草をします。
そのとき、「ハァンッ」って顔になった。
係員の女性は俺の淹れたコーヒーをかぐとき、確かに「ハァンッ」って顔になった。
飛行機に乗る私。廃止されたドリンクサービスを思いながら蓋をあける私。立ち上る芳香に、「ハァンッ」って顔になった私は、係員の女性との平行性に思い至り、ハハハッ、と声を出してしまいました。