谷中生姜を食べた。うまい。
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奄美大島出身の友人がいる。
彼はかっこいい。精悍な顔立ちとはこういうことをいうのだろう、と思わせるような堂々とした顔立ち。一世風靡セピアに入ったらさぞや一世風靡をすることだろう。
ただ、彼の顔は濃い。南国出身であることを顔が、そして顔のパーツの一つ一つが常々説いてまわる。太すぎる眉、深すぎる彫り。かもしだす黒糖の香り。すべての存在感が強く、空気の密度が濃いのだ。
そんな彼と話していたら、こんな悩みを相談された。
「俺、顔が濃いじゃん。(奄美弁をご存知の方は奄美弁に変換してお読み下さい)」
「おう。濃いな」
「だから二日酔いのときに鏡で自分の顔みると吐きそうになる」
悲劇である。冗談めかして言った彼の言葉は、喜劇でもなんでもなく、悲劇として私に伝わってきた。同様の悲劇として、朝起きたら、小池栄子と梅宮アンナが競うように自分のためにステーキを焼いていた、というものがあるが、それくらいのくどい悲劇である。
だから私は彼に励ますように言った。
「ここ数年でしっかり肉のついた自分の体をみているだけでお腹いっぱいになるから、最近食欲がないよ。おあいこだね!」
嘘でもいい。おあいこは世界を救う。