滲むインク。



s-R0016145.jpg




写真は関係ありません。

#

冬だ。冬になると思いだすのはあの屈辱の時だ。

#

3年前くらいか。私はカキ筏のオーナーになった。

1万円出すと、カキ筏につるされた1本のワイヤーのオーナーになれる。殻付きカキ110個保証。それ以上はできた分だけあなたのもとへ。カキ好きの私は一も二もなくそのプランに乗った。

当然ながらカキ。生モノであるので日持ちはしない。このため配送日は必ず特定の1日、配送先は最大でも2か所という厳しい条件であった。

1人で食べきれるはずもないと踏んだ私は、まずは日頃の感謝をこめ、実家の両親二人に20個のカキを配送するようにした。そして、こちら側では友人を募り、カキを食べる会を企画した。首尾よく8名くらいの参加者が集まったが、当時の自分の家は会社の寮で大変狭く、宴会をするのに向いていない。このため、広い友人宅を宴会場とし、そこに配送するよう設定した。

さて、当日。私は見事に当時流行していたインフルエンザにかかった。40度の熱。激しい悪寒、筋肉痛。体が一切動かない。こんな状態では当然ながらこの会に参加できない。

そうは言っても数か月から企画し、熱烈な賛同を得たこの会。私以外の参加者がしっかり集まってしまった。仕方なく、会の進行にメールでGOを出す。

午後7時。クール宅急便にて友人宅に届いたという一報が私に舞い込む。発泡スチロールにみっしり詰まったカキの写真が届くが、携帯電話による写真の粗さと高熱による涙目で岩の塊にしか見えない。

午後7時半。みんなで殻を剥く楽しそうな写真が送られてくる。高熱による涙目で、その写真は岩を愛でている人たちにしか見えない。

午後8時。インフルエンザ菌の活動はピークを迎える。トイレに行くために這いずっていたら、生で食べ始めましたという報告がある。吐く。

午後8時半、カキを焼いて食べましたというメールがある。私の体は燃えるように熱い。同じころ、両親より「20個のカキをまたたく間に食べ終えました。もう少し送ってくれればよかったのに。」という報告がある。メールに返信する元気もなくなる。

午後9時、かねてよりの私のお勧めである「蒸しカキ」を実践したという報告が友人からある。これを最後に一切私への連絡はなくなる。ぬきぬきと鼓動を上げるこめかみ、痛む関節、虚空をつかむ私の両手。天井は涙で滲む。恨み事を言う元気もない。滲惨憺。滲惨憺。かかる曲はピーター「人間狩り」。本当の自分を見るのが怖いから。今夜もあなたと部屋のあかり消しましょう。

ああ、恍惚の時があるならば。苦痛にうなされながら暗い部屋の中。

#

いまだに、その際に注文した会社から「カキオーナーになりませんか」というダイレクトメールが送られてくる。そのダイレクトメール、そっと熱湯に浸ける。


オイサオイサで山車ラジオ 第4回を上梓。



s-R0017854.jpg




写真は関係ありません。

#

「オイサオイサで山車ラジオ」というポッドキャストの第4回目をアップしました。これも更新頻度アップの一環でございます。よろしければ聞いていただければこれ幸いですが、まあ、ラジオ聞かなくてもこのページに貼ってあるYOUTUBE動画などを見たら、だいたい言っていることがわかると思います。

よろしくお願いします。


ピザをうまくするスパイス



R0014247.jpg




写真は関係ありません。

#

我が家の一階には宅配ピザのドミノピザが入っているが、注文するのはかなり離れた場所にあるピザハットの方が断然多い。

ピザハットのあのゴールデンチーズクラストだのダブルロールだのの耳に対する執着は私をとらえて離さない。ドミノピザにおけるミルフィーユの「重ねる」という重厚長大な発想よりも、いまいち人気のないあの端っこを逆にウリにしてしまうという逆転の発想に軍配をあげたい。

同時にピザハットは、あのチープな具と塩分過多な感じも他のピザチェーンを大きく引き離して私の好みに合っている。さらに言えば、お肉たっぷりメニューである「ミートパラダイス」という名前には、愛を持って口ずさみたくなるような魅力がある。

とはいえ、徒歩0分のところにあるドミノの持ち帰り20%オフは大いにアリだ。食べたい時に注文に行ってちょっと待てば食べられる利便性もいい。そして、なんだかんだ言って味はそこそこ満足できる。利便性と価格のドミノピザと、味と耳のピザハットを冷静に比較すると、ドミノピザの方に傾いてしまうだろうと思う。

こんな状況下でも、私がひたすらピザハットに注文を繰り返すのは、そのドラマ性のためだろうと思う。

我が家の入り口を大きく塞ぐ商売敵のドミノピザ。立ち並ぶ宅配バイクの横を忍び足を立てて通り抜け、我が家のポストにラブレター(ちらし)を入れる。その楚々としつつも図々しい振る舞い。

私はその勇気を受け取り、電話で応える。下のドミノのやつに聞かれてはいないか?心なしか震える小声。それを受けた彼は素早い手つきで生地に具を並べ始める。

待ちわびる私。焼き上がったピザをいそいそと保温袋に入れて飛び出す彼。家の飲み物を確認する私。不必要な唸りを上げて走り出すバイク。
テーブルの上にピザを置く場所を確保する頃、彼は三つ目通りと葛西橋通りの交差点を二段階右折する。

私が部屋であまり余った時間を持て余して腕立て伏せをするころに、バイクはようやく到着する。

そこに再度立ちふさがる商売敵。ライバル店前でピザを出すその手。ドミノの視線。何しに来たんだという視線。どうせ耳にチーズ入ってんだろという視線。こちとら生地重ねてんだよというドミノの矜持。心折れそうになりながら。
耳にチーズ入れて何が悪いんだ!ソーセージだって入れるんだぞ!思わずいやらしい言葉になっていることも気づかず、視線をかいくぐって我が家へ。階段を駆け上がる。よかった。ドミノ、もう追ってこない。藁をつかむような気持で我が家のドアホンを押す。「お待たせしました、ピザハットです。」部屋の静寂を打ち破る声に私はバッと立ち上がる。

ピザと金を交換するのももどかしく、テーブルの上の空間にいち早く舞い戻る。箱を開けるとそこには、ピザハットと私、二人だけのミートパラダイスが広がっている。だだっ広くて凹凸の少ない肉の平原が私を待っている。


飲んで写真

最近デジタルカメラを持ち歩くようになったのだが、酒を飲んで帰ると、翌日、一切覚えのない写真などを見つけたりする。そういうわけで、本日はそれです。

#



R0016069.jpg


並ぶオイルサーディン。肌のちぢれに冬を思う。




R0017497.jpg


しょうゆ。しょうゆを見て、しょうゆを思う。




R0017530.jpg


キンミヤ焼酎と爪切りとエレクトリックベース。キンミヤ焼酎は炭酸で割って飲んでいると「こんなにうまい飲み物はない!」と思うが、途中で大五郎に差し替えられても一切気付かないという逸品。




R0017665.jpg


おそらくカラオケの誰かの履歴より。こう、9回目を入力するその肩にポンと手を置くのだろう。そして、その手はジンジンとしびれるのだろう。




R0018006.jpg


卒塔婆。ストゥーパ。


#

さて、今月初頭に、「12月は更新強化月間。当社比70%UP!」と心に決めました。皆様も応援していただければ幸いです。

それにしてもいつまでこういうことを続けるのでしょうか。


足に戻る。



R0017698.jpg




写真は関係ありません。

#

たいていの服屋ではズボンを買ってすそ上げを頼むと、余りの布をついでにくれる。

世の中に不要なものは数あれど、この布ほど不要なものはあるまいと思う。何に役立つかって雑巾ぐらいのもので、使うにしても床を拭くに足る布幅が確保されているのを見るにつけ、自らの股下の短さに忸怩たる思いでジクジクなるだけだ。

とはいえ結局この布、対価を払って買ったものの一部だし、どことなく捨てるに忍びなく、「いつかこのズボンが破れてつぎはぎを当てるときに」などと考えながら押入れの中にポイとしてしまうのもウジウジとした人の営みなんだろうなぁ、などと思う。

先日、洗濯物を干していたら、しっとりと濡れたこの布が出てきた。他の衣服に混ぜて洗濯しまったようだ。

1回も使っていないのに、そもそも使い道がないのにしっかり洗剤にまみれて水にまみれて脱水されて出てきたのだよなあ。と、その縮こまった姿を見て苦笑いしながら、たこ足物干しにスッとその輪っかをかけるのである。


1/1