物語(仮) その3

シャツでの尻拭いというのは滅法骨の折れる作業であり、シャツはただひたすらに、僕の尻ではなく、よそのほうを向いて髪の毛を逆立てているだけなのだ。

友人の正二を呼ぶと「シャツはダメだね」と一言。よく見ると彼のタンクトップは尻のところまで伸びていて、ゆるやかに上下しているのだった。


物語(仮) その2

すっと冷蔵庫の扉を開けると、その中には冷蔵庫がよく眠っていて、僕はその眠りを覚ましてやる勇気もなく、扉を閉めるとうわあという声がしたので、自分の背中が二重になってしまった。


物語(仮) その1 

ある夜、扉を開けると私の眼窩のすぐ近くに粉っぽい黄色の光が浮かび、それがするり、するりと形をなしていった。

眼前に出来上がったのはひとつの冷蔵庫だった。冷蔵庫は見る見る間に丸く太り、醜い女性然とした肉の塊となったので、私はその冷蔵庫の手を取り、蹴飛ばして扉の外へと追い出した。冷蔵庫は憮然とした表情で僕をみると、パチンと指を鳴らした。そこで扉は閉まりあたりは真っ暗闇に覆われた。


ボール犬ミッキーの受難

痛々しいミッキー けが押して“出場”



カープのボール犬「ミッキー」ですが、昨日の試合では負傷してびっこをひきながら球審にボールを渡していました。

そこまでカープのDNAを継承しなくてもいいのに、と大変気の毒な気持ちになりましたが、その調子でドラフトで阪神などに引き抜かれるまでやってくれれば、カープファンとしては本望です。

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いや、むしろミッキー君にはインタビューで「両方のアキレス腱が切れんかなと思ったこともあるです。そのほうがバランスがよくなるんで。」と回答してほしい。うまく球審にボールを届けても首をかしげてほしい。


エレベーター小話 その2

家を探している。不動産屋を回ってひたすら内見を繰り返すという地味な作業は既に足掛け3ヶ月を超えた。それでもまだ自分の納得できる家が見つからない。

先日も個人的に好きな街である門前仲町で、とある小さな不動産屋に入った。条件を話すとすぐにさっさと、なかなかいい物件を4軒を見つけてくれる。さっそく内見に行くことに。

内見の担当者は不動産屋には珍しく無口な人だった。僕を部屋に招き入れると、部屋の端っこに立ち、ふとした瞬間にボソッと

「天井低いです・・・」

とか

「バランス釜・・・」

などと、自信のなさそうな声で部屋の特徴を伝えてくる。

会話が少ないと不安を覚える私は逆に気を使ってしまい、「なるほど、築30年にしては外観も古い感じもしないですねー」とか、「水周りの配置には結構気を使ってある感じですねー」とか、「ヌケがいいですねえ」とか言ったりする。

そんなことを繰り返しながら最後の4軒目になった。11階建ての11階、最上階の部屋だ。開放感のあるエントランスはいい感じ。スタスターと出て行くピザの宅配店員とのすれ違いも難なくこなして、エレベーターに乗る。

マンションのものにしては大きいエレベータ内は、激しいピザ臭に溢れていた。さっきすれ違った宅配員が配達したピザの匂いだろう。

香ばしいチーズの香り、トマトソースのジューシーかつ爽やかな存在感。サラミやペパロニの重厚さ。それらが残り香とは思えないほどの「そこにある」感を出してたたずんでいた。

食欲をそそる香りの前に無言の私と担当者。11階まで時間もあるし、ここは何か話しておいたほうがいいかな、と思いをめぐらす。点滅する階数表示は徐々にその数字を上げていく。切り出すタイミングがない。7階、8階。

「ピザ・・・」

聞き取れるか聞き取れないか、ギリギリの大きさの声が後ろからした。担当員がようやく口を開いたのだ。しかし、無情にもそれと同時にエレベータのドアも開いた。


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