物語(仮) その4

キンキンに冷えた水を持ってこいと言われたので、彼はコップに入れた水をゆっくりと揺らした。ごろりごろりと音を立てながら水の表面は徐々にそのパースを狂わせていって、最後にはそのフチあたりからキンキン、と音が鳴った。

それを見ていたカエルはその失楽園について語り、最後には果ててしまった。


物語(仮) その3

シャツでの尻拭いというのは滅法骨の折れる作業であり、シャツはただひたすらに、僕の尻ではなく、よそのほうを向いて髪の毛を逆立てているだけなのだ。

友人の正二を呼ぶと「シャツはダメだね」と一言。よく見ると彼のタンクトップは尻のところまで伸びていて、ゆるやかに上下しているのだった。


物語(仮) その2

すっと冷蔵庫の扉を開けると、その中には冷蔵庫がよく眠っていて、僕はその眠りを覚ましてやる勇気もなく、扉を閉めるとうわあという声がしたので、自分の背中が二重になってしまった。


物語(仮) その1 

ある夜、扉を開けると私の眼窩のすぐ近くに粉っぽい黄色の光が浮かび、それがするり、するりと形をなしていった。

眼前に出来上がったのはひとつの冷蔵庫だった。冷蔵庫は見る見る間に丸く太り、醜い女性然とした肉の塊となったので、私はその冷蔵庫の手を取り、蹴飛ばして扉の外へと追い出した。冷蔵庫は憮然とした表情で僕をみると、パチンと指を鳴らした。そこで扉は閉まりあたりは真っ暗闇に覆われた。


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