物語(仮) その7
小銭投入口に100円玉を1枚と10円玉を2枚入れてコカコーラのボタンを押すと、酷い音を立てて自動販売機が倒れた。慌てて彼の上に跨り、倒れてもなおチカチカと光る腹部に両手を突っ込んで手当たり次第にまさぐると、金属のひんやりとした感触がした。これがコカコーラだなと思ってそのカチンとした曲面に手を這わせるが、いくらやっても引っかかりどころがなく表面を撫ぜるだけだ。苛立ち始めた僕がその無愛想な金属に荒々しく指をめり込ませると前方からイタイイタイと声がした。
ハッとして前を見ると彼方のトンネルに向けて延々と倒れた自動販売機が連なっている。自動販売機のチカチカとした光はいつの間にか消え、代わりに大きな血管が二筋浮き立っている。いやな予感がして背後を見るとその血管をレールにして列車がこちらに向けて猛スピードで近づいてきている。
「畜生め!」
僕は叫ぶと自動販売機から飛び退き、列車をやりすごす。途中トーン、トーンと音を立てて次々に同僚が列車から身を投げ、赤々としたはらわたを晒している。僕は悔しくなって列車に飛びついた。按配よく側面の取っ手に手を引っ掛けることができたのだけど、そのころには丁度トンネルに差し掛かっていて、自分の腕のあたりからガシリという大きくて静かな音がした。
ハッとして前を見ると彼方のトンネルに向けて延々と倒れた自動販売機が連なっている。自動販売機のチカチカとした光はいつの間にか消え、代わりに大きな血管が二筋浮き立っている。いやな予感がして背後を見るとその血管をレールにして列車がこちらに向けて猛スピードで近づいてきている。
「畜生め!」
僕は叫ぶと自動販売機から飛び退き、列車をやりすごす。途中トーン、トーンと音を立てて次々に同僚が列車から身を投げ、赤々としたはらわたを晒している。僕は悔しくなって列車に飛びついた。按配よく側面の取っ手に手を引っ掛けることができたのだけど、そのころには丁度トンネルに差し掛かっていて、自分の腕のあたりからガシリという大きくて静かな音がした。