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私の「コキール男爵」

「コキール男爵」の感想や内容の紹介文を書きたい気持ちは大いにあるものの、書いてしまっては読んでない人へのネタばらしになってしまいます。
そこで「コキール男爵」の感想の代わりに、食べ物に関するエッセイを持ち寄って間接的にその面白さを伝えようというのがこのページです。
読んだ人が、著者と同じように食べ物について語りたくなるという「コキール男爵」の魅力の一端がお伝えできれば幸いです。


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「アイスの想い出」

私が子供の頃に憧れていたアイスクリームは、屋台のおばちゃんがチリンチリンと鳴らして売りにくる(※1)ものだった。ちょっと小さな氷のツブが入っていて、クリームを頬張るとその氷が歯にあたってガリッと音がする。シャーベット状のクリーム(今で言うジェラードみたいな感じ)を口の中で溶かし、残った氷をガリガリと囓る。ああ爽快。暑い夏を過ごす土地柄であるがゆえ、鈴の音が聞こえると大人も子供も買ってしまう。寒い場所から来る汗だくの観光客はイチコロだった。屋台にはいつも観光客が群がっていた。
まだあの屋台とアイスは健在なのだろうか?

屋台のアイスを入手できる場所は限られるし、子供の小遣いでは手が届かない高級品。親にねだって買ってもらう代物だった。気軽に手に入る子供の友は、ホームランバーかビニールに入った添加物たっぷりのジュースを凍らせたヤツ。商店に置いてあるアイスボックスからホームランバーを取りだし、握りしめた10円をおばちゃんに渡す。包み紙をめくりながら外に出るとホームランバーからしたたり落ちるバニラ液が指に絡みつきそうになる。それが指に付く前に舌で拭い取る。私は溶けた柔らかいアイスが大好きだった。ホームランバーは少しずつ形を変え、どんどん細長くなり最後に棒だけが残る。残った棒をしつこく舐めていると木の味が口の中に広がってくる。当りの焼き印が入ってたら特に丁寧に舐めていた。あー懐かしい。ホームランバー食いてぇ〜。
ジュースを凍らせたヤツも一緒。凍ったジュースをビニールの上からグジグジと柔らかくしてから、ビニールを歯で食いちぎり、溶けかけたジュースと氷をチュウチュウと吸う。これも、しつこくすっているとビニールの味がしてくる。あー貧乏くせー!
こんな子供だった。こんな子供ばっかりだった。

ソフトクリームなんて手が届かない高級品。今のように固いソフトクリームは存在せず、ちょっとオシャレなお店の店頭でニュルニュルとクリームを渦巻き状にしてくれる場所に行くしかなかった。家でソフトクリームが作れるなんて想像すらしてなかった。そもそもそんな上品な家庭じゃなかった。親が用意するオヤツといえば、兄弟の数だけ用意されたちり紙の上に載った「えびせん」が定番だった。
ある日、母親の買物に同伴させられてバスに乗ってちょっと大きめのスーパーマーケットへ行ったときのことだ。レジ横の陳列棚に憧れのソフトクリームが10個も入っている箱を発見してしまった。ソフトクリームが10個も入っているのに、そのアイスは子供の小遣いで買える位の値段だった。目を疑った。いいの?ほんとにいいの?この値段で!
自分が食べたいお菓子を母親の買物カゴの中に入れるなんて自殺行為に等しかった。私はそのアイスの箱を胸に抱きかかえ、スーパーのレジに並び代金を払う。買えるとはいえ思い切った出費だった。その頃は今みたいなスーパーのレジ袋は存在せず、セルフサービスでもなく、レジ係のおばちゃんが段ボール色の紙袋にアイスが10個入った箱を入れてくれた。家に帰って早くその箱を開けたくて開けたくて、バスの中でウズウズしたことを覚えている。

この後の脱力感と悲しさをどう表現していいものか…。なけなしの小遣いで買ったその代物はその後ずっと机の引き出しの中に眠ったままだった。もしかしたら、未だに実家にあるかもしれない。
私が買ったのはコレ。今でもあのときの悲しさを思い出すと胸がキュンとすることがある。
あの出来事はトラウマになっていて、アイスのコーンは絶対に残さない。人の分まで食べる。ゴミ箱に捨てられたコーンを見ると拾ってでも食べたい。金魚すくいのコーンさえも食べたい衝動に駆られるという意地汚い大人に成長した。

※1 チリンチリンアイス back
http://www.geocities.co.jp/Foodpia/3439/new.html

リリ

「パスタって」

meat sauce


「マヨネーズ」

私はマヨネーズが嫌いだ。いや、正確にはマヨラーってやつらが嫌いだ。チューブから直接吸ったりなどと、マヨネーズをそのまま食べたりするようなやつら。数年前、アイドル歌手がバラエティー番組のコーナーで、冷蔵庫からマヨネーズを取り出して、そのまま吸うというマヨチュチュとかいうのがあったが、あれ、本当に旨いと思ってやっているのか?マヨネーズはそのまま食べても旨くない。何かと一緒に食べる方が絶対に良いと思う。なんだよ、マヨラーって。なんにでもマヨネーズかけて旨いとかいうな。一口も食べないでいきなりかけるな。せっかく味付けしてある料理に失礼だろう。

突然、謝らせて頂きます。すみません。本当は私、マヨネーズ大好きです。ただ、マヨネーズを吸ったり、食べ物の相性関係無しに、何でもマヨネーズかけて旨いとか言うやつらが嫌いなんです。本当に旨いかそれ?いや、試してみるのは良い。実際、私も色んなものにかけてみた。でも、やっぱり相性があるじゃないか。私はご飯にマヨネーズかけて食えない。あんなの旨くない。

マヨネーズといえばエビだ。エビフライ。タルタルソースでなくてもマヨネーズがあれば十分だ。いや、むしろマヨネーズの方が旨い気がするぞ。中華料理屋や居酒屋にある、「エビのマヨネーズ炒め」とか「エビのマヨネーズ和え」とか最高だ。mayonnaiseもう堪らん。食ってる間、脳から気持ち良いもんがドバドバ出る。エビのチリソースも好きだけど、あったら絶対マヨネーズの方を注文する。そうそう、エビとマヨネーズといえば、某マヨネーズのCMで、水菜とエビのマヨネーズサラダを作るところを映したやつがあったけど、そのCMを見た次の日から数日間、晩飯にそのサラダを喰らった。エビはマヨネーズの最高のパートナーだ。一番かもしれん。

他に白身フライ、牡蠣フライなどの揚げ物や、剣先スルメに、マヨネーズに醤油を少し落としたのに付けるなど、まあ、でも、この辺りは、マヨネーズ好きにとっては割と常識ではないだろうか。

マヨネーズ好きの人は、たくさん居る。クラスの中、会社の部署、数人に一人くらいはマヨネーズ好きだろう。これにかけたら旨い、とよく勧められたりもするだろう。私も人に勧められ、試したものがいくつかある。

冷奴
これはマヨネーズの味が強すぎて豆腐の味がほとんどしなくなる。かけ過ぎか?と思って少なめにかけてみたりもしたけれど、やっぱりマヨネーズが勝ってしまう。醤油に少し混ぜるくらいならいいかも知れん。まあ、食べられる。でも私は冷奴には麺つゆだ。

肉じゃが
旨いけれどもかけなくていいと思う。肉じゃがはそのまま食べて旨い。

鰹のタタキ
うーむ、マヨネーズの味しかしない。鰹のタタキがもったいない気がする。やっぱニンニクと醤油がいいよ。

文句ばっかり何なので、みんなから気持ち悪いと言われる、私のこんなものにマヨネーズがお薦めって言うのを紹介しよう。

高菜の漬物
これは結構有名なのではと思った。実際、Google で「高菜 マヨネーズ」で検索すると、何件か出てくる。それにコンビニのおにぎりにも「高菜マヨネーズ」っていうのあるらしい。でも、妻を含め、いろんな人に高菜漬けにマヨネーズっていうと、「うげー!」ってな顔をする。「そんな人見たことない。」などとまで言われる。なぜだ?ひょっとして私の住んでいる福岡県でだけメジャーではなく、他所では割と普通だったりするのだろうか。いや、待て。そういえば、この食べ方を教えてくれたのは親戚だ。福岡県の八女の人だ。福岡県では八女だけだったりするのだろうか。うーむ。
これは正確には高菜漬けではなく、高菜漬けの油炒めの方にマヨネーズをかけるのが一般的(という言葉はここではおかしいかもしれないが)だ。私は炒めていない高菜漬けでも十分旨いと思う。これはひょっとしたらと思って、高菜以外の漬物にも試してみた事があるが、どれも合わなかった。油で炒めてみたら合うだろうか。これはまだ試してないけど。

食パン
なんだよ。パンにマヨネーズはよくあるだろう、と言わず、まあまあ、ちょっと待って。ただマヨネーズを塗るのではなく、マヨネーズに砂糖を多めに加えてよく混ぜて、それを塗って喰らってみて。できれば砂糖はグラニュー糖で。絶対旨いから。焼くと酸味が弱まって更に良い。マヨネーズがマヨネーズでなくなって、少し酸味のあるカスタードのようになるのだ。これはもう大多数が「オゲー!」というだろうと思う。いや当時、小学生だった私も最初は気持ち悪いと思った。しかし、母親があんまり旨そうに喰らうのに釣られて、恐る恐る口にした時の衝撃はすごかった。ま、マヨネーズじゃなくなっているよ、これ。これはケーキだ、(というのは言い過ぎかもしれないが)なんか高級なお菓子を食べているみたいだと思った。(まあ、小学生の舌なので)しばらく、食事がパンの時はそればっかり食べた。そういえば、母も福岡県八女出身だ。

マヨネーズも色々な食品メーカーから出ている。一般的なのは素っ裸の乳児と魔法の白い粉のメーカーだろう。
一時期、値段の高い調味料は旨いと、調味料に凝った時期があって、マヨネーズも高いのは旨いのではないだろうかと、色々なメーカーの物を試した事がある。有精卵だけで作ったとか、コマーシャルもしている某卵会社のマヨネーズだとか、どれも確かに酸味がまろやかで、味が濃くて旨いのだが、しかし、何か物足りないのだ。食べ始めた時は、「ああ、やっぱ良いやつは旨いね。もう今までのは食べられないや。」なんて言っていたのに、しばらく使っていると、恋しくなって来るのだ。いつものあのマヨネーズが。酸味の効いた、いつものあのマヨネーズ。素っ裸の乳児が描かれた、一番有名なあのメーカーのマヨネーズ。ああ、結局、私にとってマヨネーズといえばこのマヨネーズなのだと気づかされる。厳選された素材でもなく、手作りされているわけでもない、工場で大量生産されたものかもしれない。が、マヨネーズと言って頭に浮かぶ味はこのマヨネーズの味だ。やはり子供の頃からずっとこのメーカーだからだろうか。魔法の白い粉派の方はどうなのだろう。

うまくオチないのでダジャレ俳句で締めたいと思います

マヨネーズ マヨってないで 俺にしろ

番外編
私の母親の出身地、福岡県八女地方では、ところ天に酢醤油と砂糖をかけて食べます。デザート感覚で。我が家ではそれが普通でしたが、妻には「オゲーー!!!」ととても嫌な顔をされます。どなたか同じような食べ方をしている方はいらっしゃらないですか。


「お代官の納豆和え」

どうしてこんなに食いまくれるのか!?

…とぼくが常々思っている気に入りの一品が「納豆とオクラと長いもとうずら卵の和え物」であります。なっとうとおくらとながいもとずらたまごのあえもの。

名称が長すぎる気もするが、だからといって「なおなう和え」(頭文字)などと呼ぶのは抵抗がある。いっそ思い切って「シャイマール和え」といった呼称を提唱する手もあるが、こうなるともはや抵抗どころの話ではない(シャイマールって一体何だ?)

てなわけで「納豆とオクラと長いもとうずら卵の和え物」、まずは作り方を簡単に説明させていただきましょう。

 1.ドンブリに納豆を入れる
 2.すりおろした長いもを加える
 2.茹でたオクラを刻んで入れる
 3.ウズラの卵を割って落とす
 4.納豆に付属のダシと辛子、さらにしょう油を加えてかき混ぜる

もうどれもネバネバ。これがたまらなく美味いわけだが、ぼくなどはコイツをさらに高める努力を惜しまない。美味いものはトコトン美味くして食いたいのが人情ではあるまいか。

では、この完璧な一品に何が足りないのか? 答えは「罪悪感」と「背徳心」である。

だってそうだろう。どれだけ美味しい料理であっても、素直に食ってるだけじゃあ「ただの料理」である。「空腹は最高のソース」なんてフレーズがあるが、これもまァ確かに正論かもしれない。だがしかし、それより何より大切なのは罪悪感と背徳心だと思うのだ。体に悪いと知りつつむさぼり食う悦楽! そして盗み食いするときの快楽! 罪悪感と背徳心、ああなんて甘美な響きなんだろう。

ただ、問題はブツが「納豆とオクラと長いもとうずら卵の和え物」だということ。どう考えても健康によさそうなのだ。退廃の香りをこんな一品に求めるのは基本的になにか間違っている気がする。

「ウズラちゃんを中絶させてしまった罪悪感」や「オクラ伐採による自然破壊」に思いを馳せる、という手もあるにはある。が、どうもパンチ不足の感は否めない。これが自己欺瞞でなかったら精神的にちょっとヤバい人だろう。

そこで提唱したいのが「悪徳お代官プレイ」である。自らを妄想世界へといざなうことによって、料理のポテンシャルを最大限にまで高めるのだ。

 ・小生はお代官である
 ・今年は不作で農民たちが苦しんでおり、餓死者も多いと聞く
 ・しかし小生の眼前には…
 ・年貢として納められた納豆とオクラと山いもとウズラ卵の山!!
 ・ふふふっ、こやつらをまとめて混ぜて食おうではないか
 ・ああ、やめて下さいお代官様!!
 ・よいではないか、減るものでもあるまい
 ・減ります、お代官様!!
 ・ふふふ、そちもワルよのう……
 ・ハァー!?

てな具合にですね、こう妄想力をかきたてた上でですね、「納豆とオクラと長いもとうずら卵の和え物」を無心に頬張るんですよ。ングングッ!! ドロ〜リ! ハウアッ!! そうともワシはお代官様じゃ!! ここは正に天国じゃ!! 納豆もオクラも全て食い尽くしてやるわっ!! もはやワシは暴走機関車じゃあー!! 

そしてふと我に帰ると。

アパートの一室で「ああお代官様!」「よいではないか」などとブツクサ呟きながら、「納豆とオクラと長いもとうずら卵の和え物」を独りでズルズルほおばっている自分。さらに興に乗って「なぬ、手入れかっ!?」などと叫んでいる自分。

こんな料理が一番美味い。心の底から美味いと思うんですが、どうでしょうか……。


 
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