近年の飲食店は「製麺所」であるとか、「食肉センター」であるとか、「イカセンター」であるとか、いわゆる飲食店ではなく、その一歩手前の製造者や卸などを彷彿させる名前がかなり流行しているように思う。
実態はピンキリだろうが、そのネーミング自体のイメージはなかなか狡猾だ。「生産者により近い」「本格的」「品質にこだわる」「豪快」「直売っぽくて安い」といったイメージを喚起しないだろうか?これはより安く、しかし本物志向である現代のニーズにマッチしたところであるし、現在のところ効果はあるように見える。
とはいえ、そのような店名が流行して増え続けると、その本格的で安いイメージから乖離した店が登場し、提供される飲食体験の質が低下してくることは予想される。そのことで「製麺所」とか「××センター」などの良好なイメージが徐々に消え、消費者側の「飽き」が必ず来る。そう。今後店名の流行に関して大きな揺り戻しが来るはずである。
そこで私は考える。そういった「生産者、物流により近い」「安そう」といったイメージに落胆した消費者が求めていくものは何か。そこにこそビジネスの萌芽があるのではないか。
私の予測では、そこで求められるのは、先進的な知見により、新たなる「食」のコンセプトを提案してくれる頼もしい存在だ。自分の「食」に対する凝り固まった信念や構造を解体してくれる存在。そういった「食」の上流工程をデザイン、コンサルティングしてくれる店に対する要求が高まってくるのではないだろうか。そして、そのようなコンサルティング体験を与えてくれる店名に惹かれて集まってくるはずだ。
さあ、ここまでの仮説を元に、今後数年のうちに、例えば以下のような店名が消費者の心をつかみ、流行すると予測する。
カツ丼・コンサルティング・グループ
世界をリードするカツ丼コンサルティングファームとして、政府・民間企業・非営利団体など、さまざまな業種・マーケットにおいて、めんつゆ、ソースにとどまらないカスタムメイドのアプローチにより、クライアントが持続的満腹感を築き、組織能力(ケイパビリティ)を高め、継続的に優れた業績をあげられるよう支援を行うコンサルティングカツ丼店である。
ペロリと・トンカツ・コンサルティング
決してデロイト・トーマツ・コンサルティングの真似ではなく、ペロリといける食べ応えのない新しいとんかつの価値を提案する総合コンサルティングとんかつ店である。
しらすを売った・ハム作ったっす
決してプライスウォーターハウスク-パーズの真似ではなく、しらすとハムのマリアージュの提案をメインにする和風ダイニングバーである。
マッキンゼー&イカ
クライアントの最重要目標の達成に向け、本質的かつ継続的にイカを提供する飲食店である。
イカ&カンパニー
クライアントの最重要目標の達成に向け、イカが本質的かつ継続的に顧客のビジネスを伸長させるコンサルティングファームである。
マグロ&イカ
紅白がめでたい感じのする刺身盛り合わせである。
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飲食店を開店しようと計画している若き志士。権利は放棄するからぜひこれらの店名を使ってみてほしい。そんじゃーね!