M-1おもしろかったですね!
ウエストランドの優勝にはかなり興奮しました。
一方、傷つける笑い、傷つけない笑いみたいな話になっているのは違和感があって、頭の整理のために感想をかいてみよう思います。いや、分析とかじゃないんですよ。ほんとですよ!
今回のウエストランドのネタを見て、数年前にサンドウィッチマンの伊達みきおさんがやってた安倍元総理のマネを思い出しました。
これ、モノマネ自体がマジで最高なのですが、さらにすごいと思うのは周囲の突っ込みも含めて完成する構造になっていることなんですよね。
勝手に想像しちゃうんですけど、たぶん伊達さんは最初にめちゃくちゃクオリティの高い安倍総理のモノマネができたんですよ。質問に直接答えなかったり、いちいちアメリカのトランプ大統領との実績をアピールしたり。まあ安倍氏の実績とかは置いといて、誰もが「あるある!」ってなるネタも含めて。
でも、そのあと発表の仕方を考えたと思うんです。ネタ自体が絶対面白いし笑いも取れる。ただそのままモノマネを発表すると政治的にいろいろデリケートな人でもあるので、上上下下左右左右BAの全方位からめんどくさい話になる。・・・だったら、ヤバいやつがふざけたことをしているようにして突っ込みの矛先を自分にくるようにすればいいのではないか。
結果として常に話の回答が回り道する、トランプ大統領の話をする、という2つの特徴に特化して繰り返すことによって、繰り返しの単純な面白さに加えて、演じている自分自身を引き出しが少ないヤバいやつに仕立てて、「そればっかじゃねえか!」ってみんなに自分を突っ込ませてオチとできる。
安倍さんが好きな人からは「なんかヤバいやつがマネしとるね、似とるけど。」と思わせるし、安倍さんが苦手な人からは「そうそう!いつも答えをはぐらかすし、トランプのことばっかり言っとる」(広島出身なので広島弁ご容赦ください)となる。
どこまで計算しているのか分からないけど、たぶん超絶的な笑いの嗅覚がすべて張り巡らされた中でできたネタであり、周囲から突っ込まれることによりさらに面白くなる。すごい高度なバランス感のもとに立っているプロフェッショナルな面白さだなと思ったんですよね。
そして、これはコンプライアンスがどうの、言いにくいことがどうの、というよく言われるアレを突破する強烈な一撃なんじゃないか、とも思ったんです。でも、同時に素人がやるにはマジで難しすぎるとも思いました。
今回のウエストランドのネタはこれにちょっと似ていると思ってます。
直接的に誰かのことを悪く言う、そのことで聞いている人の心の中の「あるある」を多少の罪悪感とともに引き出しつつ、たたみかけていくことで笑いとして爆発させつつも、井口さん自身が「ヤバいやつ」になり、最終的には井口自身に対するみんなの総突っ込みになる。結果、いろんなものがうやむやに笑いとともに浄化される。圧倒的なバランス感覚のもとにある最高のネタでした。
「傷つける」「傷つけない」という二分にすると、そういった構造が無視され、あまりにも表面的にとらえられすぎて、彼らのそのプロフェッショナルが毀損されてしまうんです。そこに強烈な違和感があるんですよね。
人を傷つける部分はまああるっちゃあるんですが、彼らの漫才の本質は、多くの人の中にある「これ言われたらその人は傷つくであろうあるある」を、通常の人間では考えられないくらいに自分自身にまとっていって出来上がる暗黒雪だるま的異形と化した井口に対して視聴者に総ツッコミさせる芸だ、と言うことが言いたいわけです。(悪い日本語)
今後、井口さんも河本さんもきっとそういう傷つける笑いみたいな流れに巻き込もうとする勢力との闘いとなるのかなあと思うのですが、きっと、そういうのとは一線を画して進まれるものと思ってます。
結局分析と言われても仕方がないようなことを書いてしまいましたが、お笑いには分析はありませんので、分析ではないですね。ひとりよがりです。
以上です。