東京の大井町の駅から出てすぐのところに東小路という見事な路地がある。個人的には「東京野垂れ死にたい路地裏ベスト3」の中に入るんだが、その端に元肉屋、現立ち飲み屋(角打ちに近い)「肉のまえかわ」はある。

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こんな路地を歩くと端っこに・・・IMG_1963-001 こういうところがある
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東小路のはじっこなので、表は子供が元気に歩き回る。

ここは、毎日16時くらいからオープンしてすぐにイイ顔をしたおじさまたちで一杯になる。明るいうちから赤ら顔で飲みながらパチンコがどうしただの、今日の仕事はつらかっただの言っている紳士の憩いの場である。

その人気の理由の最も大きなものは安さだろう。例えば、以下の写真のメニューは「サラダ」100円、「メンチ」120円、缶ビール290円、しめて510円である。小腹と酒欲を満たすのにこれ以上ない設定ではないか。メンチは揚げ置きだが、衣が大変サクサクとしていておいしい。サラダも100円としては十分なボリュームだ。

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ビールはキリン一番搾りかアサヒスーパードライ。サラダは「ポテトサラダ」と名乗らないところがいい。

ドリンクと食事はこのような感じだ。

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なお、初めての人はちょっと戸惑うかもしれないが、店のシステムとしてはシンプルだ。参考までに簡単に紹介すると、

  • ビール等については奥にある冷蔵庫からとって、このカウンターのお姉さんの前に出す。
  • 揚げ物、刺し等はカウンターのお姉さんに頼む。
  • 焼き物は焼き場のお姉さんに注文して、焼きあがったら受け取り。
  • 食べ終えたらカウンターに皿類を返す。串は缶の中にポイ。

となる。

それにしても、薄利多売とはいってもこんなに安くてやっていけるのだろうか?私はふと疑問に思い、メンチカツの油を舌なめずりしてふき取りながら店を注意深く観察した。すると、ふむふむなるほど、この店に徹底して貫かれたプロフェッショナルな「コスト意識」があることに気付いた。

そう。どんなに安くていい店でも、どんなにそれが愛されていても利益が出ないと潰れてしまう。その点、この店は安さを実現しつつも、その徹底したコスト意識によって健全な経営を行うことでしっかりとこの街に根付き、多くの人を楽しませてきたのだ。

以下に、私を唸らせたこの「肉のまえかわ」のコスト意識の一端を紹介させていただく。

 

 

コスト意識その1:客に働かせる

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生姜の空き容器に突っ込まれた「セルフ」棒がまぶしい。角打ち(酒屋の店先で飲むスペースを設けた店で飲むこと)ではまあ当たり前ではあるのだが、客に冷蔵庫からビールを持ってこさせる。片付けさせる。余計な人件費はここで削減である。

コスト意識その2:中国人店員を最大限に活用する
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人件費の削減のため、中国の方のパワーを活用している。「290えーん」「メンチ、120えーん」などのぶっきらぼうな物言いが逆にこの店の雰囲気に合っており、高い臨場感を演出していると思われる。

コスト意識その3:テーブルはオーブンで代用する

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客の一部はオーブンの上で飲み食いする。オーブンをテーブルにしてしまえば、わざわざテーブルを購入する必要はない。当たり前の真実だが、これを実行する店というのはなかなかないだろう。客がオーブンの上で熱い!熱い!となろうが関係ない。苦しめ!(たぶん壊れています)

コスト意識その4:割りばしを提供しない。

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はしにもコストがかかる。ということで、客は焼き物用の串を2本とって、はし代わりとする。
さらには、食後、その串はちゃんと回収される。(私の勝手な予想だが)おそらくざっと洗って使いまわしている。通常捨てる串も再利用するとは、唸らせられる。
※なお、箸を提供しないのは「箸を出すと飲食店として認められてしまうから」なんていう噂があるが、個人的にはたぶん違うんじゃないかと思う。

コスト意識その5:七味入れを使わない

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七味を入れる瓶は別の何かの瓶を応用している。見てみるがいい、この惚れ惚れするほどに無骨な穴を。客がこの鋭い先っぽで怪我をしようが関係ない!(まあ怪我をするのはよっぽどの七味好きが耐え切れずに穴の部分を舐めたときくらいだろう)

コスト意識その6:「お願いします」を言わない。

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虚礼廃止である。気持ちは伝わればいい。「お願いします」などという言葉を書く紙も、時間もインクも節約できる。これには唸った。見事なコスト節約術である!

そういうわけで、これを読んだ方は肉のまえかわのプロフェッショナルなコスト意識に驚嘆したことだと思う。ぜひとも明るいうちから訪れて、ひたすら肉を食べてヘロヘロになって安さと旨さを堪能していただきたいものだと思う。

では、お客様よろしく

肉のまえかわ
住所: 東京都品川区東大井5丁目2−9
電話:03-3471-2377


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