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過去ログ復活シリーズ:郷に入りては

original:2004.12.29 Wednesday 21:24


先日、お腹がすいたのでとある駅の前にある立ち食いそば屋に入りました。少し贅沢をしようと、月見そばをたのみましたところ、乗っているのが生卵ではなく温泉玉子でした。

トロトロの白身に覆われた、およそ月とは思えない外見に憤慨した私は(おつゆに黄身をとかせないことにも激しく心を蝕まれましたが、その外見の完成度の方が大事ですので)、何かの間違いだろうと、店員に直訴しようと決心したのであります。

私はカウンターから身を奥にのりだし、言いました。

「これは温泉玉子でよいのですか?」

店員は間髪入れずこう回答しました。

「よいのです。」

想像以上に堂々とした返答に私はそれ以上言えず、目線は行き場を無くし宙をさまよいます。

と、さまよう目線がひとつの張り紙を見付けました。その張り紙にはこう書いてあります。

「○月○日、梅沢富美男さんが来店され、月見うどんの海老天乗せをお食べになり、『うまい』とおっしゃりました。」

梅沢富美男かあ。富美男じゃあ仕方ないなあ。驚くほどの説得力に成す術をなくした私は、静かに「うまい」と感情のこもっていない独り言を放ち、固まった黄身をスルリとひと呑みいたしました。



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はい、お送りしたのは2004年末の日記でございます。
これはですね。鳥取県鳥取駅前の立ち食いそば屋でのお話ですね。「よいのです」と言われた時は心底びっくりしたのを覚えています。

今でも、何でもかんでも温泉卵にしていくという傾向は多くあります。温泉卵自体を否定するわけではないのですが、月見そば・うどんについては生でないと成立しません。

初期段階は黄身をつぶさないようにそろそろと食べる。途中からほんのり白くなった白身でソバとねぎを絡め取ってズルポッとすすりこむ。ほぼソバもなくなったところで、汁の熱でとろみを増した黄身をプリッとつぶしてとろりとあふれ出る黄身を残りのそばですくいとってフィニッシュ。最後にすこしだけ黄身のとけた汁をすすりこむ。

そういう店はこの物語をなんと心得ておるのか。

あと、近所の肉汁つけそばの店では、あの黄身と白身を分離する機器を使って黄身だけを入れたりしています。お前、白身捨ててんじゃねえよ!あのソバと一体となったじゅるんという感じを知らねえのか?ダメだよ〜。という気持ちになります。

その店、そば自体はうまいのでよく行くのですが、先日ついに勇気を出して「黄身、分離しないでいいですから!」と声をかけました。

店員、こっちを向いて「ハァ?」という顔。そんなに卵全体を味わうことが非常識なことか!とりあえず私の願いはかなえてもらいましたが、釈然としない思いでいっぱいです。

あとですね。いや、もう長すぎるんでいいや。

その他、当方の麺類に関する考察はこちら。

あんかけ肛門期
タイトルすみません。あんかけうどんの素晴らしさを説いています。

今年はこれが来る
一部で有名な姫路駅の立ち食いそばを食べた感想です。結局ブームは来ませんでした。

立ち食いそば賛歌
素直な賛歌です。