(「伏見」は2016年5月末に閉店してしまったとのことです。本当に残念だよ!)
すみません、半年前から京都に仕事でちょこちょこ通うようになった初心者の30代男が申し上げております。
京都に行った際に、自分や家族向けの土産を探すと結構途方に暮れます。京都の和菓子はとても充実しているのですが、甘いものがそんなに好きではない私はあまり心惹かれない。そうすると漬物とか昆布とかちりめん山椒とか、と小物系に走ってしまいがちです。もちろんそれもいい。でも自分向けのおみやげはもっとなにかこう、
- ドーンとした実体があり
- 食卓が華やぎ
- そこでしか買えない
もののほうが心を揺さぶります。そういった3点を満たすものを、ありがたくも見つけましたよ、という話です。
居酒屋好きの間ではとても有名(それこそ東京もんの私が知っているくらい)な「伏見」というお店が京都は三条京阪のほど近くにあります。
うまくて量の多い魚と強い個性のあるおかみさんが名物ですが、こちらで飲んでると、その個性のあるおかみさんがやってきて、だいたい以下のやり取りが展開されます。
「鯖寿司1本持って帰りますか。」(淡々とした関西イントネーションのかすれ声で読んでください)
ここで悩んでいると、
「いる、いらない、どっちですか」(同上)
と来る。そこで「んー、すみませんやっぱりいらない」と言うと
「1本はいらない。そしたら、2貫ほど食べて決めなはれ」(仁鶴っぽいイントネーションで読んでください)
で、まあ「そこまで言うなら・・・」と折れ始めると
「まあでも1本買うて、そのうち2貫をここで食べる方が得ですよ」(仁鶴っぽいイントネーションで読んでください)
「えっ?えっ?」
「はいー、鯖寿司1本、2貫ここで食う~」(厨房へ)
果たして、このDoor in the faceテクニックとFoot in the doorテクニックを巧妙に組み合わせた営業トークでビニール袋に鯖寿司を持って帰るおっさんが後を絶たない、というわけです。
さて、この鯖寿司。1500円です。高いか安いかは皆さんの判断にゆだねます。京都で有名な「いづう」の鯖寿司は1本4500円くらいします。柿の葉寿司は14個で1800円。鳥取は米子の吾左衛門鮓は1800円。ふむ。
こんな感じの外観です。
中身は10個に切ってあります(見栄え悪くてすみません)。鯖の厚みはなかなかのもので、とても脂がのっています。酢の締め加減もちょうどいいし、昆布のうまみがじっとりと、そしてしつこくなく浸み込んでいる。まあ、より丁寧に説明するなら「結構うまい」ということになります。1つ1つの食べ応えがあり、サッとした食事にも申し分ない。
さらには食卓にあのがめついおかみの顔が浮かぶわけです。交渉に負けた己の弱さに苦笑いをしながらむっちりとした鯖をかじるのも悪くないものです。「交渉に負けたけど、鯖寿司はうまいから俺は勝負に勝ったの!勝ったんだって!」と虚しく叫ぶのです。どうですか。このイベント性。これこそがおみやげではないか?
なお、おかみによると日持ちについては、「日本基準では明日までに食べて。中国人やったら2日後まで大丈夫言うよ」とのことでした。私は中国人基準で食べきります。当然早めに食べたほうがおいしいですが、量が多いので結構残ります。ちなみに、通常は冷蔵庫には入れない方がいいです。固くなるので。夏場はまあ、どうにかしましょう。
ということで、伏見の鯖寿司おすすめさせていただきました。京都は内陸ということで、若狭などから日持ちのするしめ鯖を運んでおり、大変珍重されていたと聞きます。まあ、そういうゆかりなども含めて鯖寿司、いかがでございましょうか。
なお、お前は分かっとらん!京都の土産はこれやろが!というご意見があったら、ぜひコメント欄などにてご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願いします。