俺の塩狩峠
これまでロクに本を読んでこなかったのだけど、最近本の魅力に取り付かれている。電車の時間を利用し、2日に1冊程度のペースで読む本は実に楽しい。携帯電話でこのページを見るのもよいけど(宣伝です)、満員電車のぎゅうぎゅうの中、試行錯誤しながら次のページをめくるその行為自体も、自らに難行を課しているようで、悪くない。
こういうペースで本を読んでいると、自分の興味の赴くところだけでは読むものが尽きてきてしまう。実際、同一の作家の本ばかりが集まって視野が広がらないことこの上ない。
そういうわけで、
「最近面白い本を探しているけど、何かいいものはありますか?」
とみんなに聞いてみた。
すると、1つ、「塩狩峠」はいかがでしょう?というご意見があった。さっそくどのような本なのか調べてみようと、amazonにアクセス。すると下記のようなあらすじがあった。
一体この「札幌に行ったら列車が暴走した」というあらすじでどうやったら長編小説になるのか。大変興味を持ったので、さっそく読む前に「俺の塩狩峠」を書いてみることにしました。
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阿鼻叫喚の車内を背後に抱え、信夫は前方を見据えてハンドブレーキに手をかけた。
このハンドブレーキには1.機械の動作や移動をとめるための手動式の制動機構。または、その機構で止める行為 2.鉄道車両に備わるブレーキのひとつ 3.自動車のブレーキ機構のひとつ、などの意味があるが、信夫が乗っているのは電車であるため、手をかけたのは当然ながらこのうち2の意味のハンドブレーキである。
無骨な金属で出来たそのブレーキは、これから訪れる惨事の重みを受け止めているかのように、強く激しい抵抗をする。信夫はブレーキにより強い力をかけるため、両手で握り手をつかんで全体重をかけそのブレーキを引いた。すると、ギィという重々しい音をたて、ようやく1cmほど手前に動いた。しかしその1cmという明らかに頼りない距離は事態を何も変えず、列車の速度はついに時速100kmを超えた。
ハンドブレーキ、別名直通ブレーキは単行運転用の「直通空気ブレーキ(SM)」と「連結運転用の非常弁付き直通空気ブレーキ(SME)」の2種に分かれる。
「直通空気ブレーキ」は供給溜め(Supply Reservoir:SR)と呼ばれる加圧された空気タンクから、運転台まで導かれた空気溜め管と呼ばれる空気管を通して空気圧を供給し、通常これを締め切っている制動弁を操作して開閉することで、直通管(Straight Air Pipe:SAP(※1))と呼ばれるブレーキシリンダー直結の空気管に加圧し、これにより所要の制動力を得る、非常に単純なブレーキシステムである。
「連結運転用の非常弁付き直通空気ブレーキ」は直通空気ブレーキで問題となった、列車分離事故発生時等の対策として、非常用の自動空気ブレーキとこのために必要な非常管(Emergency Pipe:EP)を併設している。
この列車の走る宗谷本線は非常管を備えた「連結運転用の非常弁付き直通空気ブレーキ」を採用していた。しかし「連結運転用の非常弁付き直通空気ブレーキ」は4両編成以上では後部車の動作について、極端なタイムラグや効きの悪さから実用にならない、という欠点があった。実際のところ4両編成を主としている宗谷本線は爆弾を抱えながらの運行であったといわざるを得ない。
信夫は操作盤の上に乗り、握り手を抱えてのけぞりながらさらに体重をかける。
今度はクククッと音をたて、3mm動いた。
こういうペースで本を読んでいると、自分の興味の赴くところだけでは読むものが尽きてきてしまう。実際、同一の作家の本ばかりが集まって視野が広がらないことこの上ない。
そういうわけで、
「最近面白い本を探しているけど、何かいいものはありますか?」
とみんなに聞いてみた。
すると、1つ、「塩狩峠」はいかがでしょう?というご意見があった。さっそくどのような本なのか調べてみようと、amazonにアクセス。すると下記のようなあらすじがあった。
「結納のため札幌に向った鉄道職員永野信夫の乗った列車が、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れ、暴走し始めた。声もなく恐怖に怯える乗客。信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた…。明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らの命を犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、人間存在の意味を問う長編小説。 」
一体この「札幌に行ったら列車が暴走した」というあらすじでどうやったら長編小説になるのか。大変興味を持ったので、さっそく読む前に「俺の塩狩峠」を書いてみることにしました。
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阿鼻叫喚の車内を背後に抱え、信夫は前方を見据えてハンドブレーキに手をかけた。
このハンドブレーキには1.機械の動作や移動をとめるための手動式の制動機構。または、その機構で止める行為 2.鉄道車両に備わるブレーキのひとつ 3.自動車のブレーキ機構のひとつ、などの意味があるが、信夫が乗っているのは電車であるため、手をかけたのは当然ながらこのうち2の意味のハンドブレーキである。
無骨な金属で出来たそのブレーキは、これから訪れる惨事の重みを受け止めているかのように、強く激しい抵抗をする。信夫はブレーキにより強い力をかけるため、両手で握り手をつかんで全体重をかけそのブレーキを引いた。すると、ギィという重々しい音をたて、ようやく1cmほど手前に動いた。しかしその1cmという明らかに頼りない距離は事態を何も変えず、列車の速度はついに時速100kmを超えた。
ハンドブレーキ、別名直通ブレーキは単行運転用の「直通空気ブレーキ(SM)」と「連結運転用の非常弁付き直通空気ブレーキ(SME)」の2種に分かれる。
「直通空気ブレーキ」は供給溜め(Supply Reservoir:SR)と呼ばれる加圧された空気タンクから、運転台まで導かれた空気溜め管と呼ばれる空気管を通して空気圧を供給し、通常これを締め切っている制動弁を操作して開閉することで、直通管(Straight Air Pipe:SAP(※1))と呼ばれるブレーキシリンダー直結の空気管に加圧し、これにより所要の制動力を得る、非常に単純なブレーキシステムである。
「連結運転用の非常弁付き直通空気ブレーキ」は直通空気ブレーキで問題となった、列車分離事故発生時等の対策として、非常用の自動空気ブレーキとこのために必要な非常管(Emergency Pipe:EP)を併設している。
この列車の走る宗谷本線は非常管を備えた「連結運転用の非常弁付き直通空気ブレーキ」を採用していた。しかし「連結運転用の非常弁付き直通空気ブレーキ」は4両編成以上では後部車の動作について、極端なタイムラグや効きの悪さから実用にならない、という欠点があった。実際のところ4両編成を主としている宗谷本線は爆弾を抱えながらの運行であったといわざるを得ない。
信夫は操作盤の上に乗り、握り手を抱えてのけぞりながらさらに体重をかける。
今度はクククッと音をたて、3mm動いた。