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走るは池上線

東京は五反田から蒲田をつなぐマイナー路線、東急池上線に乗っています。3両編成のこじんまりとした路線に多くの人が乗っていて、見える駅、見える駅に賑わう商店街があります。休日だからでしょうか。自然と漏れ出てくるハレの気配に何度でも往復してしまいたい気持ちになってしまいます。そんな電車に乗っていると、とりとめもないことを思い出すわけです。

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私が大学に入ってすぐの話。

桑名に住んでいる姉が「明日、東京行くから」と電話をかけてきた。まあ、飯でも一緒に食べるくらいだろうなどと思っていたら「あんたの大学を見物させてもらう」とのこと。また七面倒くさいことになった。

大学で17時に待ち合わせ。5分くらいから待ち合わせ場所の大学正門前で待っていると、語学でいっしょのクラスの田原さんが通りがかった。おー。などと挨拶をかわし、自然と会話になる。

田原さんは気さくな女の子だ。ボサノバが好きで、そのボサノバの良さを身振り手振りつけておもしろおかしく語ってくれる口調がとてもよかった。印象は多少地味ではあるものの、日本画のような顔の曲線がとても綺麗だし、笑ってほころぶ顔は布袋さんのようでチャーミングだった。

まあ、とはいっても特に恋愛感情をいだくということもなく、ほんのりした好意(そういえば俺ってカレー好きだよなあと思うような)があったのみであった。

そのように田原さんと話していたら姉が来た。なんとなく流れで彼女のことをクラスの友人である、と紹介する。姉丁寧にお辞儀し、言葉を選びながら田原さんと一言二言の会話を交わす。通りすがりだった田原さんは「じゃあ、私はここらへんで」と去っていった。

彼女の背中を見送りながら姉が私を肘でつついて一言。

「まあ、磨けば光るというか。がんばって」

と、大変失礼な発言。


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田原さんはこの東急池上線の住人だった。この路線に乗るとこの時のやるせない気持ちと焦燥感がないまぜになった微妙な気分が思い起こされてなんとなく頭をポリポリと掻いてしまう。