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我が闘争

先日職場に行ったら通路にあるホワイトボードに何か書かれていた。

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書類を留めるマグネットを配置することにより文字を書いている。作者が何を考えて「トラ」という文字を書いたのか分からないものの、この堂々たる姿にはなにやら人を感銘させるものがある。

伝えたいものがないのに何かを伝えようとする情熱というのは尊い。ソムリエがワインの芳香を確かめてときめくように、私もそこからにおい立つ白い情熱にほのかな興奮を感じていた。誰だ。これを書いたのは。こんな素敵な人間が今の会社にいるなんて。


翌日出社してみると、そのホワイトボードには変化があった。

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なんとなく受け狙いに走っているような気がして少しの失望感を感じたものの、ほのかな痴の薫りは残っていて悪くない。トラの「ト」の右半分だけをそのままに、「ト」の縦棒部分をうまく分解して「ベ」という文字に持っていった手腕は評価に値する。

この掲示はその日の夕方にはすぐに変化し下の状態となっていた。

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まあ規定路線であろう。最後にはおそらくベロが出てきて大団円となるのだろうなどと思いながら退社する。

そして翌日。

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違った。しかもソが大きい。ベム→ベラ→ベロという規定のレールから離れることに精一杯で、書かれた文字も意味のないものとなっている。悪くない迷走だ。

さらにその日の昼にはこんな形になっていた。

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いいぞ。ペの「○」の下部分の赤いマグネットはどこから持ってきたのかはしらないが、いいぞ。ホワイトボードの前でぐっとこぶしを握る自分がいた。

しかし、翌日にはホワイトボードはその名のとおり真っ白になり、これまで縦横無尽に文字を描いていたマグネットは右端に整然と並べられてしまっていたのだった。