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warterproof

職場の60歳になる、よき先輩社員が声をかけてきた。

「四万十川ちゃん、四万十川ちゃん。」

「なんでしょう。」

「これ。これいくらすると思う?」

腕を差し出す。布のバンドの腕時計だ。見たこともないメーカー名が記されているし、文字盤に何の変哲もなく、お世辞にも高そうには見えない。しかし意外なところにその時計の価値を上げる特徴があるのかもしれない。そこの辺りも勘案して、

「うーん、4800円くらいでしょうか?」

ブー!

よき先輩社員はしたり顔で私に不正解の旨を言葉と顔であますところなく伝え、、ニコニコしながら言ってきた。

「980円でした!」(へー!)「しかも10気圧まで耐えれるらしいんだ。」

そりゃすごい。

「で、10気圧って何?」

「いや、気圧の単位で測るって確か水の中のことだと思いますけどね。」

「水なの?」

「ええ、たぶん」

よき先輩社員はうーん、と悩み始めた。

「どうしたんですか」

「いやね、水につけちゃいけないって書いてあったから」

説明書を見せてもらうと確かにその通りだった。10気圧まではいけるけど、水につけてはいけないらしい。何に使うんだ。その耐久性。先輩社員の肩が心なしか元気なく下がった。私は励まそうと、検索技術を駆使して下記の言葉をかけた。

「大丈夫ですよ!地球の空気が10倍重くなってもその時計は生きてるんですから。地球の気体が全部ラドンになっても大丈夫です!」

先輩社員の顔が少しだけ明るくなった。いいことをしたと思う。