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「にっこりとーろくー」の「くー」の部分。

ファブリーズが好きだ。何にでもかける。部屋に、衣服に、カーテンに。それらにかけ終えたら自分にファッとかける。ちょっと自分が祝福されたような、少しだけ幸福な気持ちになる。

そういうことをしているからファブリーズの減りは早い。この前買ったと思ったのに容器はその重量を失っている。

そんなわけで薬局にファブリーズを買いに行った。通常のもの、除菌プラス、そしてそれらの詰め替えバージョンが棚に並んでいる。私をとってくださいといわんばかりに、前に乗り出して客の手にとられるのを待っている。

棚の前で逡巡する。除菌プラスは外せない。なぜなら我が家には菌がいるから。誰がなんと言おうと菌だらけなのだ。であるからして、迷うのは容器入りか、あるいは詰め替えか。

もちろん空になった古容器は家にある。しかし、家を新鮮にしたいというその気持ちは容器にも及ぶ。裏っかわのところがちょっとはがれかけたファブリーズで私は満足できるのか。ピカピカの表面、ビシッと張ったビニール。そんな容器じゃないとリフレッシュ感なんて無くない?そういう葛藤が私を悩ませるのである。

ひたすら迷い、ぢっと立ち尽くして思いを馳せる。自分の家に、世界に。

そう世界だ。自分が家にある容器を捨て、新しい容器を買うことによって、世界中の川という川が、山という山が泣く。

エコロジーという後ろ盾に守られた私は堂々と詰め替え用パックを購入する。

さて、家に帰った。詰め替えの時間だ。ビニールの注ぎ口をはさみで切り、注ぐ。トクントクンという音を立てながら満たされる容器。

容器の裏っかわのビニールはちょっとはがれてるけど、エコロジーという新しい観念は僕を勇気付ける。さあ!我が部屋をよい匂いにしてくれたまえ。

最初の一矢を放とうと力強くレバーを握り締めると、柄がポッキリと折れた。

山は泣かなかった。川も泣かなかった。私も断じて泣いていない。ただ、ファブリーズの容器の口からだらしなく滴がたれるのみである。