行きつけのタイ料理屋で新メニュー「チムチョム」が始まった。
「チムチョム」は、別名イサーン鍋という名で、トムヤムっぽいスープに鳥肉や豚肉、野菜を入れて食べるという料理。小さな素焼きの鍋に入れて煮込む、というたたずまいが愛らしい。
愛らしいのだが、その名前はどうだろう、と思う。出来れば口に出してチムチョムと言ってみて欲しい。愛らしい別のものが想起されないだろうか。料理は会話のカンフル剤になる、と言うが、チムチョムに関してはそんな料理を起点にした会話がひどいものになるのではないだろうか。そんな心配を持ってしまうのである。
例えばA子がチムチョムを一口食べる。そして目を見開いて言う率直な感想はこうなる。
「チムチョムってこんなにおいしいんだ!」
それまでの愉快な会話は止まるだろう。
例えば、チムチョムの鍋奉行になった人の言葉はこうなる。
「チムチョムが熱くなってるよ!」
「ほら!チムチョムからおつゆがこぼれてる!」
「さあ、おまちかね!チムチョムを食べよう!」
全体的にエロ漫画の説明口調風の台詞になってしまう。非常に危険だ。
私もしたり顔でこう言わないよう、気を付けたい。
「ほーら、どうだ。これがチムチョムだ。」