私のもの。
写真は関係ありません。
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知人のTさんの職場で異臭騒ぎがあったらしい。
1Fのある一室のみ強烈な臭いが充満していて、部屋の中を探してもその原因は分からずじまい。そのうち、Tさん含む他のフロアで働く人まで見物(臭物)に来て「くさっ!」と言い放って帰っていく始末。
部員総出の調査の結果、開け放たれた窓を通じて、隣の駐車場からその臭いがやってきていることが分かる。この事態は「窓を閉める」というあっさりとした方法により収束し、職場は無事いつもの平穏な状態に。
その話を聞いたTさん。昼休憩時に同僚と異臭の原因を見に行こう!という話になり、駐車場へ。4台程度停められる駐車場の中ほどに車一台。そのすぐ手前の車止めの上にしっかりと存在感のあるブツが乗っていた。
うわあ、あれだあ。どうするよ。ブツを見たり指さしたりしながら話していると、その場に職場によく出入りする取引先のAさんが現れる。Aさんは二人の視線の先を見て、ああ!したり!といった顔になり、こう言った。
「すみません、すみません、邪魔ですよね!すぐどかしますから!」
どかしますから!?
Tさんと同僚の顔にはてなマーク。顔を見合わせる二人。Aさん、その二人の様子を見て続ける。
「いや、私のなんで。すんませーん!」
そう言うとブツの方へ激しく向かっていく。おいおいおい!手には何も持ってねえぞ!どうやってどかすんだよ。ていうか、「私の」ってなんだよ。やめて。ねえ、やめて!
そんな2人の動揺をよそに、Aさんは気持ちのよい小走りでブツの横を通り過ぎ、奥にある車のカギを開けていそいそとエンジンをかける。キュキューと方向転換し、茫然としている二人の横まで来る。パワーウィンドウで窓がスーッっと開くと、Aさんは礼儀正しく「いやー、すんませんでしたー。また来ますんで。」と言い残して去って行った。
車の後ろ姿を見つめる2人。
停めるものが一台もなくなった駐車場。車止めの上には相変わらず大きな存在感を持ってブツがたたずんでいたとのことである。