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涙について2拝

高校のころの話。私が所属していた2年C組ではナ行の生徒が

ナカタ

ナミオカ

ニシダ

と並んでいた。担任は4月から毎日全く同じ順序でその名を呼んでいたにも関わらず、9月のある日、このように呼んだ。

あー、ツモリ。        ハイ!

んー、トダ。         ハイ!

あー、ナカタ。        ハイ!

あー、ナミダ。


一瞬唖然とした教室では、その事態が飲み込めたと同時に、静かに涙くんさよならの合唱が始まった。

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ところで、「すし屋ではワサビのことをナミダと言う」ということをつい先日初めて知った。アガリとか、ムラサキとか、そういうのの仲間だ。山葵を食べると涙が出るからこの言葉が生まれたのだろう。至極分かりやすい由来。

まあ、私のごとき自意識の塊になってしまうと、今まで知っていないことを恥ずかしいと思うし、知っていると逆に知ったかぶりみたいに思えてこちらも恥ずかしくなり四方ふさがってしまう感じで、斜めに逃げ出したい!などと思うわけだ。

それにしても、ムラサキだの、アガリだの、オアイソ!だの、そういう言葉は言葉自体にそこまで付随する意味をもたらさないからまだいいものの、ナミダについては感情にまつわる言葉として古今様々な用途で使われ、使い古され、すぐにその情景が浮かんでくるために、少し趣が違ってくるのではないかな、と思う。たとえば。

刺激を強めにしたかった客は
「すみません、ナミダください」
と、思わず最後のリクエストをしてしまうことになる。

店員のサービスの一言は、新進俳優の無茶な見得のようになってしまう。
「ナミダ、もっと欲しかったら言ってください。」

ズボラな店員の一言は思わず無頼派になってしまう。
「あーー、すんません。ナミダ切らしちゃってるんですよ」

そういう意味でも、先日知ったこのナミダという言葉には一定の距離を持って接していきたいと思う。