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お春じゃなゐか

「はっぴいえんど」というバンドの「春らんまん」という曲が好きだ。特に歌詞はとっすんとっすんと心臓のあたりを裏側から箒の柄で叩くようなつらさに満ちていていい。なんせ最初が

「向うを行くのは お春じゃなゐか
      薄情な目つきで 知らぬ顔」

なのだ。そりゃあもう、その匂い立ってくる情景には心底泣きそうになる。

そのように大好きな曲なので歌詞を空で覚えて、よく頭の中で歌っていたのだけど、最近分かった。

私はずーっとこの曲の大サビを

「たぶん、もうそっちの冬が行くと
 ねえ、もうそっちの夏が来た」

だと思ってて、もうここが本当に一番好きでむしろ歌詞の山場だと思ってた。でも本当は

「暖房装置の冬が行くと
    冷房装置の夏が来た」

だった。

カラオケで初めて歌ったときに「さあ、この山場だ!聞け!」といった感じでマイクを構えたら本当の歌詞が出てきて真実を知ったのだけど、そりゃあもう恥ずかしかった。恥の多い人生を送っているけど、とことんまで好きだったものが間違っていると、よよとひざをついて泣き崩れるしかない。泣いた。

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という話を友人にしたら、

「私も実はそう間違ってた」

とのこと。他の人からも「いや、確かにそう聞こえるよね。」


ここでピンと来た。これは実はダブルミーニングで、どっちにもわざと聞こえるようにしているのではないか。しかもそれは非常にポピュラーな話で、みんなそれを知ってて私に気遣って「間違うよね」とか調子を合わせてくれてるのではないか。

なんてこった。とことんまで好きだったものが間違っていると思ったら間違ってると思ったことが間違っているだなんて、よよとひざをついて泣き崩れるしかない。


さめざめと泣いた。