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我はいかにして彼の難関に立ち向かいしか。

8月末の定時終了後に、派遣で来ている女性Yさんが退社するとのことでお別れの挨拶があった。

オフィスの中央で皆の視線を浴びながら、彼女はその若さからは想像できないほど堂々たる挨拶をした。場は唸りながらも、その真摯な姿に涙ぐみ、場内は大変荘厳な空気となった。

そこで大きな地震が起こった。オフィスはミシミシといやな軋み音を立て、デスクの上のものがガサガサと擦れ合う音がする。その大きさたるや、自分の目線がぶれるほどで、私などは「ああ、いかん。机の下に!」などとオロオロとしてしまう。

ところが彼女、全く動じる風もなくそのままスピーチを進める。場内は地震に驚けばいいのやら、スピーチに泣けばいいのやら分からないという混乱状態となった。他部署からは「ヒャー」という悲鳴なども上がってくる。私の机からは数本のボールペンが落ちた。スピーチは続く。

「私の後任は、Sさんになります。どうぞ変わらずお引き立てをお願いいたします」

後任のSさん、ペコリとお辞儀をする。Yさんに渡すために持っていた花がワシワシと揺れ、後ろではブラインドが大げさな揺れを見せた。

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自然災害で大笑いしたのは初めての体験でした。