東京の東側、地下鉄の清澄白河駅ほど近くに「だるま」という居酒屋がある。深川資料館通りにある古い店で、私は常連とまではいかないものの、個人的にはここ数年で一番通っている。自分の居酒屋欲を満たしてくれる素晴らしい店だ。

で、そのだるまがどうやらテレビ版「孤独のグルメ」で出てくるらしい。うむ、なんか分からんが悔しい。多分しばらく人が増えるだろうし、色も付くだろう。でもそれは仕方ないことだ。

そういうわけで、番組より一足お先に自分がなぜこの店に通ってしまうのか、その魅力をちょっとまとめてみたい。皆様の参考になれば幸いです。

理由1.安い

ビールの大瓶が450円である。これは東京ではなかなか安い。

居酒屋に行って瓶ビールを頼まない方も多いかもしれないが、633mlの頼もしさは居酒屋でこそよく分かる。1本でいい感じになれる。

さらには、刺身は日替わりで250円くらいからあり、妙にクオリティが高い。魚類が日替わりで安くてちゃんとうまい、というところはこの店が近隣住民に支持される非常に大きな理由だ。

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カツオ刺しはだいたい380円。大ぶりで圧倒的に新鮮だ。

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キス天も380円。さっくりとした衣とふっくらとした身が絶妙なバランスだ。幾分多めのししとうも嬉しい。っていうか多いな、ししとう!

他の品も基本的に量がしっかりしている。魚以外はすげえうまい、とかいうものはなく、うますぎない(ごめんなさい)。けど、カウンターにどかっと座ってビール大瓶1本とお通しと何か刺身を1品で、計1000円強で夜の組み立てを堪能することができるのが大変な強みである。

理由2.他に行くところがない

2つ目からさっそく消極的な理由になってしまったが、繁華街ではない清澄白河駅付近で夜11時30分までやっている居酒屋というのは殊の外少ない。また、日曜営業もやっており、輪をかけてここしか飲むところがない状態になる。静かな通りに煌々と光るこの店の明かりにおっさんたちが集まってくる。

煌々と光る明かりに吸い寄せられたおじさま達で店はいっぱいだ。

理由3.メニューの短冊が圧巻である。

 

だるまの短冊。写真が不自然で申し訳ない。

メニューは多い。刺身、天ぷらをはじめとした和食からサーロインステーキ、グラタンまである。多くの人のワガママな食欲を満たすことができる体制になっていると言ってもいい。そんなこの店のレギュラーメニューは画用紙に書かれ、壁一面に貼ってある。壁一面の食べものの名前。これが実に圧巻だ。

理由4.日替わりのお通しが、心がこもっているのかこもってないのかよく分からない

この店は日替わりのお通しがある。200円である。これがいい。おいしいかおいしくないかは問題ではなく、ぞんざいな存在感がすごくよい。一例を挙げる。

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比較的アタリの日はこういう煮物がでてくる。心の中で静かにガッツポーズをするとともに何からどう攻めるか計算を始める。

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ニュートラルなときはこういうのが出てくる。高野豆腐だ。

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ぬか漬けが出てくることもある。

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いわゆる桃屋あたりの穂先メンマ的なものが出てくることもある。

そして、これまでに出たお通しの中で最も素敵だったのが以下だ。

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お通しはこの店の誰にも分け隔てなく与えられ、老いも若きも男も女もコの字のカウンターで向かい合ってソーセージをくわえている。その可笑しさに気づいたとき、この空間に加担できてよかったな、と思う。

近年、世の中ではお通しを拒否するとかしないとかそういう話もあるみたいだが、私からはお通しは拒否するのではなく、体験する、ということを提案したい。

 

理由5. 新たな食の提案がある

この店に斬新な料理、というものはほとんどない。しかし、組み合わせの提案が新しい。オリジナリティとは既存のものを最適な形で組み合わせることによって生まれるのだということを再認識させてくれる。

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オニオンロールぱんを日本酒のおつまみに提案。

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隣の御仁はハムエッグにマヨネーズをかけて、それを日本酒でやっている。

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「焼カレードリアン」という料理はまだ怖くて頼んでいない。ドリアの誤りである可能性は99.99%であるかもしれないが、1年くらい「カレードリアン」という名前だったので、0.01%くらいは本当にドリアンが出て来る可能性もある。この店にはそれだけのポテンシャルがある。私はそれが怖い。

あと、ワインもあるが、メニューが多いといってもワインに合うつまみは、ぬ!(無いの意)。だから、ししゃもあたりで流し込む!

理由6.張り紙に誤字がないときがない

この店の張り紙はすごい。圧倒的な説得力と誤字力がある。

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  維持しますもで。

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今回は誤字はないかも!と思わせてからの「ビンゴゲーメ」に店先で崩れ落ちた。やりたいよ、ビンゴゲーメ!
IMG_3837-0.jpg「申し訳御座いますが」というパワフルな押し切り感は活用したい。

このような誤字は、定型の言葉にはない原始的なコミュニケーションへの意欲を感じさせてくれ、一気に親近感が増してくるのだ。

まとめ 

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夜になるととても静かな通りに、この店の紺色の暖簾が深くかかっている。中を覗き込まないとどんな店かも分からないところだが、覗いてみるとおっさんたちがみっちりとコの字カウンターを囲み、そこそこ年のいった若者グループが手前のテーブルを埋める。きっと何かいいかもな、と思えるはず。

これからの季節、この店から出て、商店街で秋の夜風を浴びると気持ちよいだろうなと思う。この記事を読んでいただいた方がのれんを覗き込んでみてもらえると紹介者冥利につきます。ちなみに、私は落ち着いた頃にまた行きます。

店主はスマートフォン利用。使い方を客が教えている。

coldsoup

自称ホームページ第3世代の旗手

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