2023年もどうぞよろしくお願いします。
2022年もいろいろいい曲を知ることができました。相変わらずサブスクリプションでいいと思った曲からサジェストされた楽曲を手あたり次第聴く、という高度なのかアナログかよくわからない手法で聴く曲を増やしていっています。
なんか聴く曲ないかな~と思ったら、ちょっと候補に入れてもらえると嬉しいなという思いで選ばせていただきました!
選曲のご参考までに、いくつか私の属性をご紹介しておきます。40代、主として洋ロック育ち。好きなアーティスト・ジャンルはPrince中心のミネアポリスファンク、Post Punk(Talking Heads、XTC、PILなど)とDance Punk、70年代の甘々なPower Popも大好き。国内はムーンライダーズ、たま、近田春夫などが好きです。最近は主としてイギリス、アメリカ、オーストラリア、日本あたりのインディーズシーンをサブスク中心に掘りながら聴いている感じです。
日本国内部門
ショック(サカナクション)
こんなストレートにアフリカンロックをやるかと思った。いつもは鼻につくかっこつけも、ニューウェーブだとこんなにハマるもんだな、っていう驚きがあったです。Talking HeadsのGreat Curvesそのまんまなメロディのところもにっこりできる。
ともすれば、いなたいサビの盛り上がりとその3つめのコード&ベースめちゃ好きです。いい。
ACTION (CHAI with ZAZEN BOYS)
2021年12月の曲だけど、まあ、入っていいでしょう!個人的にはかなり意外だった組み合わせだが、向井秀徳が泥に這いつくばっているところにCHAIの空虚なチアが降り注ぐ感じが痛みを増してていい。
夕暮れ空に殺されかかっている
17歳のど真ん中 田んぼの畦道真っ赤っか
大人になったらもうちょっと
マシになるかと思ってた
マジになるかと思ってた
ひいいい、心細い、心細いよー!でも動くしかねえんだよ。ってことだと思います。たぶん。
熱海(Kroi)
ドライブにバッチリなヌケた曲としての完成度が素晴らしくて、この夏めちゃくちゃリピートしました。彼ら曰く、”ただただ熱海を表現したいと思って書いた曲”らしいんですが、個人的には本当に熱海が表現された歌詞にグッときてしまった。
ビニール屋根 商店雨よけ
日に焼けきった看板見つめ
サンシャインたけなわ
ゆるり揺らぐこの水際
うっとりしちゃう
うっとりしちゃうよな
サンシャインたけなわ
光り輝く水面とビーチ
うっとりしちゃう
うっとりしちゃうよな
Kroiさんたちは見た目がすげえ怖いので、私のような40代腐れサブカル中年ではマジで友達になれそうな感じがしないのですが(偏見)、熱海はビニールの雨よけ屋根であり、錆び切った看板であり、光り輝く水面であり、うっとりしちゃうんである。その美しさをこんなに端的に表現してもらって、そして共有させてもらえる。本当にありがとうという気持ちなので、よければ友達になってください。
その気にさせないで(マハラージャン)
跳ねるようなカッティングと大好物コード進行には「待ってました!」みたいな声が出てしまった。圧倒的に高品質で気持ちをブチ上げる2022年ウェルメイド楽曲賞をお送りしたい。
それにしてもこのPVもすごい。曲のイメージをさらに強化する峰岸みなみの文字通り弾ける笑顔とダンスにはプロを感じるし、アイドル時代よりも伸び伸びとアイドルしている感じがする。ネタ枠での活躍、結婚などいろいろありましたが、とりあえずこの曲とPVは個人的に彼女の2022年活動ベストではないかと思っております。
(ちなみに私は2010年くらいに峯岸みなみさんを輝いている女性として記事にしたことがあり、その1年ちょっと後に例の坊主事件があり、とても複雑な思いでこの10年の活動を見てまいりましたので、なんとも感激もひとしおなのです。)
舞台の上で (松木美定+浦上想起)
キラキラしていて、ドラマティックなジャズワルツ曲。この曲で初めて松木美定さんの名を知りましたが、穏やかかつ力強い曲運びは2022年通しても印象に残ってました。これもだいぶリピートしましたね。
トウキョウ・シャンディ・ランデヴ(MAISONdes feat. 花譜, ツミキ)
10月から始まった「うる星やつら」のオープニングソングになった曲。たぶん我々世代(40代)が聴くと、細かくカットされて詰め込まれた音の粒にビビッた後に、なんかなじみのある感じのメロディとリズムが展開されるので、耳に確実に残ると思います。
サビのメロは泰葉の「フライディ・チャイナタウン」に寄せてるのか。食い気味のリズムは勝手にシンドバッドに寄せているのか、テイクオンミーなんて言葉も、そうか、一通りうる星やつらの同時代の何かを意図的に選んでるんだろうな。でもそこへ乗せられたのは、臨界点に達して怒り辟易しつつもあたるに焦がれる人間的な姿で、そこがめっちゃいいですよね。絶対もう1回聞きたくなる「あい~まい~な」のメロとリズム、正直これは勝ち戦じゃと思いました。
なお、リバイバル版のうる星やつら自体は6話くらいで止まりました。私が求めていたうる星やつら感を一通り摂取し終えたためです。
海外部門
海外部門はかなりインディーズ寄りに聞いておりました。すごくいいので是非。
I love my Dog (Mapache)
カリフォルニアのフォーク・カントリーバンドMapacheの新アルバムです。蓋を開けたら2022年一番聴いたアルバムになっておりました。とにかく好きなんです。なんと申し上げたらいいのか、誤解を恐れずに言うなら、疲れたカントリー。一仕事終えた夜に窓際でぼーっとしながら聴きたい感じの曲たちです。こちらの曲は
このバンドは単純なカントリーだけでなく、フロントマンのフィンチさんがメキシコに2年くらい住んでいたとかで、突然スペイン語のメキシコ民謡風の曲が始まったり、ハワイ風もあったり、音や文化が立体的に交差しているんですよね。それが飽きさせず何回も聴いてしまう原因になったのだと思います。ぜひアルバムを通して聴いていただきたいです。
Expert in a Dying Field (The Beths)
この曲には本当にグッときました。マジで2022年、聴くたび胸がグッと詰まるベスト1曲です。これはたぶんボーカルのエリザベスさんの切実な歌声と、心揺さぶるストレートなメロディによるものでしょう。ニュージーランドのバンド、The Bethsの3rdアルバムの表題曲です。
彼らの以前の作品も聴いたことがあったんだけど、わりとポップで疾走感のある曲が多い。そんな中、今年出たこの曲は彼らとしてはテンポが少し抑えられており、メロディ1つ1つを丁寧に紡いでいる感じで、本当に特別な曲です。
How does it feel to be an expert in a dying field?
私は、英語そんな得意じゃないけど、この「枯れ行く分野のエキスパートでいるのはどんな気分?」っていう問いかけを聴いたときは切なさにおののいた。
たぶんだけど、あなたと私の大切な関係があり(恋愛でも友人関係でも家族でも読み替えられると思う)、それを大事なものとして育て上げ、慈しんで、でもいつか終わっていく。その終わりゆく時に自分はそんな枯れてしまった関係のエキスパートとして、その終焉をどのように見つめているのだろう。っていうことだと理解しました。
んであと、真の意図とか関係なく直感的に40代にはグサグサッと来るのだ。あー、マジ俺の仕事の領域このままやってると瀕死だしDying Fieldだし、心細い~みたいなのも一緒に来るので本当につらい。それが切なさをなぜか助長するのだ。わけわかんねえけど。とにかく聴いてみてほしい。
Best Life (CheekFace)
2021年の曲だったりするんだけど、2022年に知ったんだからもういいじゃん、という気持ちになっています。自らをTalk singing bandと呼んでおり、その名の通り、ずっとしゃべってる。そのジャンルは日本でいうとトリプルファイヤー。だけど、歌ってることはヒリヒリはしない。オシャレで諧謔に富んでいる。シンプルで音数が少な目な私の大好物なやつで、Little Creatures以降のTalking Headsの風味を感じます。カウベル最高ですよね。
Mine(Gustaf)
さらに、これなんて2020年の曲で本当にすみません。でも、この最高なAudiotreeのライブが2022年なので、2022年でランクインです!いいんです
いいんです!NYのポストパンクバンドですが、やっぱり見どころはボーカルの方のマジ顔です。クソかっこいい。この動画では、コーラス女性が牧歌的な笑顔をしているのとの対比もすごい。これは是非動画で見ていただきたい。
音はかなりソリッドで、ギターのキンキンくる感じ、前のめりに迫り来るボーカルの迫力など、「わしはこれが聴きたかったんじゃ!」感がすごい。Gang of Fourとかそのあたりのヒリヒリする手触りが今の音として響いてきます!
Déjà Vu (Toro y Moi)
ほっかむりおじさんToro y Moi(トロ・イ・モア)の2022年の新作MAHALから1曲。大々的に評価が高かった前作に比べてわりと小粒な曲が揃ったアルバムになっているけど、この曲、最高です。60~70年代サイケの90年代のリバイバル時期のローファイな空気感がそのままに届いてきて、私には青春の音楽みたいな感じで胸が高鳴りました。そしておまけに抑えた曲調の中に映えるサビのメロディの高揚感たるや。さすがです。
夏とMoonlight Shines! (イルカポリス 海豚刑警)
台湾のバンド「イルカポリス」が2022年末のギリギリに突然発表した川本真琴カバーのこの楽曲。圧倒的にさわやかで、キュートな仕上がりに心躍りました。
実は彼ら2022年に新アルバムを出しているのですが、ポップから一歩離れたところに行こうとしていて、すごく期待を持つ作品ではあったのですが、個人的にはリピートまでいかなかったんです。
彼ら、たぶん大名曲である「安平之光」などの入った2019年のファーストアルバムの完成度が素晴らしすぎて、いわゆるファースト後のThe Stone Rosesモードに入っているような気がしてます。(昨年のライブとか見ても、すごくそれを感じる。同世代の英ロック好きにしか伝わらない表現で本当にごめんなさい。)
もし彼らを聴いたことがなかったら、ぜひこの曲は聴いてみてください!日本ロックと明らかな異国と、共通する青春感が絶妙な「平行世界」感をかもしていて最高です。
で、そんな飢餓感の中でのこの曲は、心から待ってました!という感じです。どんどん実験を続けていって、たまにこういうちょっとひねくれていてポップなところに帰ってきてもらえればうれしいです。
おわりに
と、いろいろ振り返ってみましたが、たぶんジャンルは偏ってないと思うので、どれか一つくらい読んでいる人に刺さるといいなーと思ってます。また来年お会いしましょう。たぶん。