さて、前編につづいて後編です。主に日本のインディーズからの選択になります。
しろつめ備忘録 – ebb:flow
しろつめ備忘録は東京の3人組のバンドで、2024年に出たミニアルバム「リマインダー」ではストレートなオルタナ~J Rockサウンドで丁寧にメロディーを紡いでいるいいバンドだなと思って、それから追っかけていました。(音の粗さも含め次に来るぞ!という感じを期待させてくれるめっちゃいいアルバムです)
そんな中で2025年に出たこの曲は潮の満ち引きを思わせるようなアンビエントサウンドで相当意表を突かれました。実際そのようなテーマなのだそうで。アンニュイな雰囲気がバチッとハマって一気にこのバンドの奥行が広がった1曲だと思います。
先にそういうギミックに言及してしまいましたが、そもそもVocalのおはな氏のメロディーメイク&コード当てのセンスが抜群なところに、それを彼女の世界観を素直に広げることができるバンドの力があったんではないかなと思ってます。25年末にまたEPも発表され、26年以降のさらなる活躍を期待してしまうバンドです。
GeGeGe – ラブソング
24年末に出たアルバムではありますが、ほぼ2025年ということで入れさせていただきます。石川県の音楽プロジェクト?GeGeGeの「また会おう」から「ラブソング」という曲です。
私はマジで🎵ダダッダ ダダッダ ダダッダ ダダッダのリズムで進む曲が大好きで、Sonic Youth のSundayとかYo La TengoのLittle Eyesとか。ダダッダとはちょっと違えど個人的に同じジャンルに入れているのはゆらゆら帝国の「無い!!」のライブ版とか。記憶に新しいところだと24年に出たluvisの「Higher」とかもこじゃれながらステキなダダッダ曲だったと思います。これ系の曲とかリズムは呼び名とかあるんですかね。Neu!とかKanとかのハンマービートにも通じる一定のリズムの反復からの高揚・興奮は現代のボレロみたいな位置づけであろうと思っています。
この曲はアルバムの最後を飾る曲なのですが、イントロから「あ、これはダダッダが来るぞ・・・!」と期待をぶち上げる展開からのダダッダが来て思わずガッツポーズをしてしまいました。ゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲーンというギターの音のチョイスとか抜群ですね。
ラストの長尺のギターソロは、単音でシンプルなギターですごくうまいとかではないんですが、「ありがとう」という言葉と一緒になって非常に印象的で余韻が残るものになっています。これはたぶん私の大好きなプリンスのPurple Rainのアウトロのギターソロのところのコード進行に近いのが勝手に余韻を膨らませているかもしれません。
「ラブソング」という曲名で「ありがとう」言いながら高まって「ロケット飛ばすよ!」って絶頂しながら「分かんない」で締める歌詞もいいですね。まあ、何がいいのかは言葉で説明するのも野暮になるので「分かんないよ」と締めつつ、僭越ながら2025年ベストアルバム最終曲賞を贈呈させていただければと思っております。
ゆうらん船 – Departure
ゆうらん船は2016年結成の4人組バンドで、ボーカル内村氏の柔らかい声と太いベース、ピアノが非常に印象的な絡みをするバンドです。90年代オルタナ~2000年代の日本のロックをベースにいろいろな過去の要素をうまく吸い込んで独自の音を出しているバンドという印象を持っております。
この曲は3枚目のアルバム「My Chemical Romance」の1曲。アルバム名はなんというか、人を食いすぎというか、正直「おい!」という気持ちにもなりましたが、このDepartureはとにかくドラムとベース、ピアノのリズムのタイム感が最高に楽しい曲です。2025年ベスト「カバーしたら絶対楽しそうな曲」大賞受賞曲です。このタイム感でライブで曲を奏でられるところにバンドの成熟とか信頼とかを感じて、勝手に47歳の視聴者がもだえ苦しむ、という気持ち悪い状態が産まれました。
曲はそのリズムワンアイデアにとどまらず、実にのびやかなサビがあり、旅立ちを表す瞬間的に瞼に残る光景、という歌詞もこの曲を彩っており、バンドの力を非常に感じる1曲になっていると思います。
まあとにもかくにも、1回目のサビ終わりからピアノが重なり→ドラムのあの入りの絶妙なもたったタイム感、ここだけは感じていただきたいと思い推薦した次第でございます。
Trooper Salute – 天使ちゃんだよ
2025年で、一番声と音でオリジナリティを感じたバンドです。名古屋発の5人編成バンドです。既に2025年に各所で話題になっており、FUJI RockのRookie a go goにも出たりするなど爆発しています。きっと今年のエイトジャムの2025年ベスト曲に川谷絵音が9位くらいに選定するんじゃないか、と予想しています。まあただのあてずっぽうですが、そのくらい話題になってるということです。
このバンドで最も印象的なのはボーカルの方の声でして、ともすれば頓狂にも感じるクセが強めの曲群が、彼女のまっすぐかつ独特の抑揚がかぶさった圧倒的にオリジナルな歌声により完全にこのバンドでしかなしえない音になっているんですよね。聴いたらたぶん一発で印象に残ってしまうと思います。
さて、「天使ちゃんだよ」は冒頭から始まるリズムが印象的です。我々世代には金井克子の「他人の関係」モチーフではないかと感じさせます。パッパッパパッパ、パールライスです。とはいえ、リズムは「パッパッパラパスパッ」という声とともにドラムがロック的な絡みをしていて現代的でカッコイイです。絡んでくるスラップのベースも超いい。
最近出たミニアルバムの「野菜生活」という曲でもセーラームーンの主題歌をモチーフにしたりなど、そういうのをうまく曲に取り込む方たちなんだと思います。
パッパッパラスパのリズムに乗ってストレートに歌い上げるところからの「天使ちゃんだよ~」は、過剰に感情的になりすぎない「天使ちゃんだよ」というおどけたような言葉。だからこその悲痛な響きに聴こえる、そういう落差も取り込んだ表現ができるところ、だいぶ抜けたセンスがあると思ってます。
あと、このバンドの魅力はきっとライブにあると思うんですよね。47歳が行くと場違いになりそうですが一度見に行ってみたいなーと思うバンドです。
秋山竜次 – 関係者〜ぼくにもなれるかな?〜
ここ数年は秋山竜次氏の才能が再爆発している期間ではないかと思います。それが音楽方面にも大量に波及してきています。
元々、「Tokakuka」という傑作曲を世に出していましたが、23年から始まったラジオ「俺のメモ帳」や、秋山への愛が高じてテレビプロデューサーになるというメモ少年氏との組み合わせで開催された「秋山歌謡祭」が彼のクリエイティビティに拍車をかけている状況です。本年だけでも、こちらで紹介する「関係者」や「アネックス館ラビリンス」や「焼き肉の会計の時に現れる専門のガム」や「実家の壁に住む専門のそばかすの少女」など珠玉の曲が発表されています。作曲過程はイマイチ分かりませんが、多くの曲で作詞作曲がクレジットされており、たぶんメロディは自分で作っているのは間違いないと思います。
彼のクリエイティビティの結構重要なところに「異常な記憶力」みたいなのがあると思います。ラジオ「俺のメモ帳」の「逆カラオケ」のコーナーでは視聴者に歌を歌わせて自分は口だけで伴奏するということをやっているのですが、あそこで彼の口で再現される曲の解像度は明らかにおかしいです。
きっと視覚・聴覚など多方向からものすごい密度で情報を取り入れることができ、蓄積することができているというのがベースにあり、そこに、情報の違和感や共通項(あるある)を爆速で組み合わせて表に出すことができるという技術が組み合わさって大量のアウトプットが出せる、というなのではないかと思います。もちろんそういう「記憶」をベースに模倣する、という作り方なので、曲にオリジナリティがあるとかではないんですが、言葉と曲の組み合わせとか、あまりにも情報の処理が早すぎるので凡人は口を開けてアウトプットを受け取るしかなくなるのですよね。
個人的にあまり才能とか天才とか言いたくないタイプなんですが、そのように言わざるを得ない人という感覚です。
さて、こちらの「関係者」、曲自体は岡村靖幸を少し意識したオトナなアレンジ。でも何よりやはりこのテーマとされた「関係者」というチョイスの絶妙さに悶絶しました。
私も10数年くらいバンドマンだった時期がありますが、ライブハウスの出演の喜びの10%くらいはジーンズに貼る布ステッカーと、それによる楽屋への出入り自由というのがあったな、と思い出します。いや10%というのはうそかもしれない。90%くらい占めていたかもしれない。
この曲で描かれる「関係者にあこがれる子供目線」っていうのは、マジでどの年齢、階層、役割にあっても人間が持ち合わせているものであり、人間の行動を変えうるかなり強めの欲望であるよな、というのは改めて意識させられます。
この曲の最後は「そうさ、僕も地球の関係者!」ということで、うやむやにされてしまうのですが、これがまた非常に残酷というか、いや、まあそういうしがらみから解放されてよかったねなのか、どっちとも取れますが非常にアホくさくてすばらしいですね。
2025年ベストライブのコーナー!
Hiromi’s Sonicwonder – Full Performance (Live on KEXP)
一度でいいから 見てみたい ひろみが髪を おろすとこ
でおなじみの上原ひろみですが、23年からHiromi’s Sonicwonder名義でピアノ兼キーボード、トランペット、ベース、ドラムの4人体制で活動されています。そもそも上原ひろみとかジャズ、フュージョンあたりは守備範囲ではないんですが、こちらのKEXPのライブは刺さりました。バンドとしてめちゃくちゃ気持ちいい音が出ていて、一流のミュージシャンマジスゲエ、ってなりました。マイルドなトランペットの音色、音の粒が気持ち良いベース、そして熱量の高いピアノにNord Leadの音がはじけて、あまりにも綺麗にユニゾンもハマって音楽めちゃ楽しい!ってなるのを体験させてもらいました。
おわりに
さて、前編後編合わせて10曲くらいご紹介させていただいたと思いますが、1曲でもお、聞いてみようってなってもらえると紹介者冥利に尽きます。
数年前に比べると日本、韓国、台湾などアジアのインディーズシーンの熱さを強く感じます。また、シューゲイザーなどのオルタナ色を感じる曲が増えてきて90年代に多感な時期を過ごした世代には耳馴染みがいい曲が増えてきたなという感覚です。
逆にいうと英語圏の曲が自分には届きにくくなっており、これは自分の掘り方が足りないだけのか、アジアの熱量に比べ相対的に静かなのかちょっと判断しかねるところです(たぶん前者)。2026年もさらなる動きを元気に追っていきたいという所存でございます。
ありがとうございました。





