タグ別アーカイブ: 居酒屋

清澄白河 だるまに行く理由

東京の東側、地下鉄の清澄白河駅ほど近くに「だるま」という居酒屋がある。深川資料館通りにある古い店で、私は常連とまではいかないものの、個人的にはここ数年で一番通っている。自分の居酒屋欲を満たしてくれる素晴らしい店だ。

で、そのだるまがどうやらテレビ版「孤独のグルメ」で出てくるらしい。うむ、なんか分からんが悔しい。多分しばらく人が増えるだろうし、色も付くだろう。でもそれは仕方ないことだ。

そういうわけで、番組より一足お先に自分がなぜこの店に通ってしまうのか、その魅力をちょっとまとめてみたい。皆様の参考になれば幸いです。

理由1.安い

ビールの大瓶が450円である。これは東京ではなかなか安い。

居酒屋に行って瓶ビールを頼まない方も多いかもしれないが、633mlの頼もしさは居酒屋でこそよく分かる。1本でいい感じになれる。

さらには、刺身は日替わりで250円くらいからあり、妙にクオリティが高い。魚類が日替わりで安くてちゃんとうまい、というところはこの店が近隣住民に支持される非常に大きな理由だ。

IMG_3857.JPG
カツオ刺しはだいたい380円。大ぶりで圧倒的に新鮮だ。

IMG_3715.JPG
キス天も380円。さっくりとした衣とふっくらとした身が絶妙なバランスだ。幾分多めのししとうも嬉しい。っていうか多いな、ししとう!

他の品も基本的に量がしっかりしている。魚以外はすげえうまい、とかいうものはなく、うますぎない(ごめんなさい)。けど、カウンターにどかっと座ってビール大瓶1本とお通しと何か刺身を1品で、計1000円強で夜の組み立てを堪能することができるのが大変な強みである。

理由2.他に行くところがない

2つ目からさっそく消極的な理由になってしまったが、繁華街ではない清澄白河駅付近で夜11時30分までやっている居酒屋というのは殊の外少ない。また、日曜営業もやっており、輪をかけてここしか飲むところがない状態になる。静かな通りに煌々と光るこの店の明かりにおっさんたちが集まってくる。

煌々と光る明かりに吸い寄せられたおじさま達で店はいっぱいだ。

理由3.メニューの短冊が圧巻である。

 

だるまの短冊。写真が不自然で申し訳ない。

メニューは多い。刺身、天ぷらをはじめとした和食からサーロインステーキ、グラタンまである。多くの人のワガママな食欲を満たすことができる体制になっていると言ってもいい。そんなこの店のレギュラーメニューは画用紙に書かれ、壁一面に貼ってある。壁一面の食べものの名前。これが実に圧巻だ。

理由4.日替わりのお通しが、心がこもっているのかこもってないのかよく分からない

この店は日替わりのお通しがある。200円である。これがいい。おいしいかおいしくないかは問題ではなく、ぞんざいな存在感がすごくよい。一例を挙げる。

IMG_4963.JPG
比較的アタリの日はこういう煮物がでてくる。心の中で静かにガッツポーズをするとともに何からどう攻めるか計算を始める。

IMG_5610.JPG
ニュートラルなときはこういうのが出てくる。高野豆腐だ。

IMG_5102.JPG
ぬか漬けが出てくることもある。

IMG_3713.JPG
いわゆる桃屋あたりの穂先メンマ的なものが出てくることもある。

そして、これまでに出たお通しの中で最も素敵だったのが以下だ。

IMG_3853.JPG
お通しはこの店の誰にも分け隔てなく与えられ、老いも若きも男も女もコの字のカウンターで向かい合ってソーセージをくわえている。その可笑しさに気づいたとき、この空間に加担できてよかったな、と思う。

近年、世の中ではお通しを拒否するとかしないとかそういう話もあるみたいだが、私からはお通しは拒否するのではなく、体験する、ということを提案したい。

 

理由5. 新たな食の提案がある

この店に斬新な料理、というものはほとんどない。しかし、組み合わせの提案が新しい。オリジナリティとは既存のものを最適な形で組み合わせることによって生まれるのだということを再認識させてくれる。

IMG_3861.JPG
オニオンロールぱんを日本酒のおつまみに提案。

IMG_5928.JPG
隣の御仁はハムエッグにマヨネーズをかけて、それを日本酒でやっている。

IMG_3858.JPG
「焼カレードリアン」という料理はまだ怖くて頼んでいない。ドリアの誤りである可能性は99.99%であるかもしれないが、1年くらい「カレードリアン」という名前だったので、0.01%くらいは本当にドリアンが出て来る可能性もある。この店にはそれだけのポテンシャルがある。私はそれが怖い。

あと、ワインもあるが、メニューが多いといってもワインに合うつまみは、ぬ!(無いの意)。だから、ししゃもあたりで流し込む!

理由6.張り紙に誤字がないときがない

この店の張り紙はすごい。圧倒的な説得力と誤字力がある。

IMG_3862.JPG
  維持しますもで。

IMG_5104.JPG
今回は誤字はないかも!と思わせてからの「ビンゴゲーメ」に店先で崩れ落ちた。やりたいよ、ビンゴゲーメ!
IMG_3837-0.jpg「申し訳御座いますが」というパワフルな押し切り感は活用したい。

このような誤字は、定型の言葉にはない原始的なコミュニケーションへの意欲を感じさせてくれ、一気に親近感が増してくるのだ。

まとめ 

IMG_4816-0.jpg 

夜になるととても静かな通りに、この店の紺色の暖簾が深くかかっている。中を覗き込まないとどんな店かも分からないところだが、覗いてみるとおっさんたちがみっちりとコの字カウンターを囲み、そこそこ年のいった若者グループが手前のテーブルを埋める。きっと何かいいかもな、と思えるはず。

これからの季節、この店から出て、商店街で秋の夜風を浴びると気持ちよいだろうなと思う。この記事を読んでいただいた方がのれんを覗き込んでみてもらえると紹介者冥利につきます。ちなみに、私は落ち着いた頃にまた行きます。

店主はスマートフォン利用。使い方を客が教えている。


会議室完備のセルフ酒場で打ち合わせ!都会のオアシス「ぬ利彦ビジネスコート」

(現在この「ぬ利彦ビジネスコート」が入っていた「第一ぬ利彦ビル」が建て替えのため、閉店しています。完成は2017/3/31とのことですが、建て替え後にビジネスコートが残っているかは残念ながら不明です。)

タイトルがくどくなってしまいましたが、本当に素敵なお店でしたので興奮とともに報告致します。

20131003-125836.jpg

「ぬ利彦ビジネスコート」です。何度でも口に出して読みたい。「ぬ利彦ビジネスコート」

宝町駅徒歩1分、京橋駅徒歩4分くらいのところにある居酒屋・・・ではなく「ビジネスコート」。生ビールを全自動マシンで注ぎ(300円)、チューハイを自分で注ぎ(200円)、飯は無料の柿ピーその他(日替わりでキムチ、冷奴などを確認済)を自由にとって食い、そして酒類以外は何でも持ち込みOKという徹底したセルフ化がなされております。

店内は広々としており、2Fにはホワイトボードが設置された会議室完備。つまり、酒を飲みながら打ち合わせできます。酒も飲めるし会議もできるし最高じゃないですか!

20131002-234605.jpg

さて、私は先日一人でふらっとここを見つけて入ったので、その際の詳細レポートを。

飲み会のおともに!

ぬ利彦ビジネスコートへの行き方

場所は宝町駅徒歩1分、京橋駅徒歩4分くらい。昭和通り沿いのビルです。でも入り口は路地にあるので普通に歩いていると確実に見逃します。

〒104-0031 東京都中央区京橋2丁目9−2 第一ぬ利彦ビル
開店時間:17:00~21:30 (飲酒可能タイム) 土日祝休

20131002-184117.jpg

圧倒的な「ぬ」感。

 

20131002-234954.jpg
このビルの1階南側にコミュニティストアーというコンビニがありますので、そこから西側に(京橋方面)路地に入ります。

20131003-122445.jpg
すると、ビル内になんとなく喫茶店な雰囲気のお店が見えます。外には全く表示がないので注意。

20131002-234459.jpg

入り口正面がこのような感じです。いにしえの観光施設を思い浮かべるような佇まいです。17時以降は特にお金を払わずに入れますので、躊躇なくそのままガッシャンといってください。
17:00までは300円でソフトドリンク飲み放題のカフェになっています。それはそれですごい。

中に入るとこんな感じの空間が広がっています。(店の奥からの写真。右手非常口サインの下が入り口です。)

20131002-234624.jpg

店員は大変チャキッとしたおじさん1名。とても気さくかつ、ほどよく距離感をとってくれるので、大変心地よい接客でした。操作に困ってるとすぐ飛んできてくれます。撮影の許可も快くいただきました。

「ぬ利彦ビジネスコート」の特徴

1.全部自分でやる。だから安い

20131002-235233.jpg

ビールは自動サーバーにジョッキをセットして300円を入れると素敵に注いでくれます。ジョッキは店中央の冷蔵庫でしっかり冷やされてるんですねえ。ビールはレーベンブロイ生ですので、大変美味しいです。
ちなみに、放っておくとちょっと溢れる仕様だそうで、ギリギリになったら自分でスッと取り出す必要があります。店員のおじさんに「引かなきゃこぼれるヨッ、ヨロシクネッ!」と言われました。

20131003-122550.jpg

「300円レーベンブロイ~無料の柿ピーを添えて~」

20131002-235742.jpg

チューハイはこちらのサーバを使います。左下のトレイにチャリンと200円入れて、自分で好きに注ぎます。店員さんによると「奥に押すと炭酸がでるからネッ!」とのことです。濃さを調節できるということですね。

チューハイ好きの方のための情報をお伝えしますと、中は宝酒造の「純」です。ハードコアなチューハイ好きには少し風味が感じられすぎてしまうかもしれません。でもアルコールも程よく濃くしっかりとした圧の炭酸が効いていて、さわやかに酔えます。また、コップに入れるチューハイと氷の量は自分で調節できるので、氷を少なくすればヘタな店の2杯分くらいは簡単に注ぐことができます。1000ベロならぬ400ベロくらいも可能かもしれません。

なお、レモンはないので、必要な人は持ち込むことを推奨します。

その他の酒類は冷蔵庫に入っているので取っておじさんにホイっと見せます。ほぼコンビニ売りか、それより安いくらいのお値段で日本酒、ウィスキーハイボール、ホッピーなどが飲めます。

特にキンミヤ300ml瓶300円とホッピー100円の組み合わせは強烈です。ピンとこない方のためにお伝えすると、だいたい1杯あたり焼酎70ccくらいが適量。つまり4杯分はこれ1本でまかなえるわけですね。ホッピー代も合わせると700円で4杯いけるということです。ひええ。

(いや、家でやればそりゃそのくらいの値段ですけど、ここは居酒屋・・・ではなくてビジネスコートですから!)

20131003-125845.jpg

ぬ利彦さんは酒の卸業をされているので、その関係もあるのでしょうか。それにしても、この店のすぐ近所の茅場町にセルフ居酒屋の偉大なる店「ニューカヤバ」がありますが、ここらへんどうかしてるんじゃないですかね。

2.あろうことか、酒類以外持ち込み自由

20131002-235722.jpg

店内酒類以外持込自由です。向かいがコンビニ(コミュニティーストアー)なので、そこで買って持ってくることができます。デパ地下などでたっぷり買ってここで広げるというのもよいかもしれませんね。

ちなみに歩いて数分のところに肉のハナマサがあるので、ひき肉1kgやとんこつ冷凍パック2kgを買ってきて眺めるというのもいいでしょう。

20131003-122536.jpg

私はそんな趣味はないので、コンビニでポテサラを購入して食べました。うまい!

3.会議室・個人ブース完備

2Fは会議室です。ホワイトボードもあるので会議し放題です。プロジェクターがあれば抜群でしょうが、確認していません。

20131002-235159.jpg 20131002-235142.jpg

飲み会をしているときにホワイトボードがほしいと何度思ったことか。考え方次第でいろんなことに活用できそうです。会議室ブースは予約もできるそうです。「酒を飲まない人は250円もらうけど、あとは飲んでくれたら別にお金かかんないよ」とのことでした。

なお、部屋の奥には個人用ブースがあります。味集中カウンターというか、酒集中カウンターとでもいうんでしょうか。家じゃないところで一人で酒と対峙するところってあんまり無いような気もするので、なかなかな空間です。

4.落ち着く

いきなり主観的な話になりますが、落ち着きます。お店がそこまで目立たないからか、あまり客は多くありません。近所のサラリーマンが静かに利用していました。また、店内はテレビが多いですが、音量はかなり控えめ。

あとは、80年代~90年代初の雰囲気がビシビシとする店内の内装が私の脳にやすらぎをもたらすのでしょう。

ぬ利彦の歴史

nuri当然ここまで読まれた方の中では、「ぬ利彦」ってなんなんだ、と興味がわきますよね。ホームページが充実しているので詳しくはそちらをご覧いただくとして、こちらではダイジェストを。

ぬ利彦は1717年、中澤彦七が創業した酒類、醤油等の卸売りの会社です。都内にかなり強い地盤を持っています。今はそれに加え「株式会社ぬ利彦ITソリューションズ」という関連会社でITソリューション業なども行われているそうです。会社名が素敵です。

この特徴的な社名の由来は初代の「塗屋彦七」という商号から来ているそうで、商号の「塗」と「彦」をとって「ぬ利彦」と名前をつけたとか。これは現代で言えば「木村拓哉」を「き夢託」とする、みたいな感じでしょうか。

また、この近辺の「宝町 」という町名(現在は「京橋」に統合)はこの会社の七代目中澤彦七さんが提案したそうでございます。この地にどっしりと根ざした会社であることが伺えます。

このビジネスコートは現社長九代目中澤彦七が海外のホテルにあった「ビジネスコート」を参考にして始めたものだそうで、収益よりも地域への貢献を考えて続けているとのこと。いやあ、なんともありがたい話です。

総括

というわけで、私はこの「ぬ利彦ビジネスコート」大変気に入ってしまいました。活気のある立ち飲みもいいですが、座ってダラダラと持ち込み飯をつまむ時間というのも素敵なものです。おそらくこれから何度も通ってしまうことでしょう。

チューハイを飲みながらホワイトボードでどうでもいいことを説明したい方。東京駅~日本橋付近でとにかく安くて落ち着けて座れる店が欲しい方。「ぬ利彦ビジネスコート」の活用をおすすめさせていただきます。

以上、よろしくお願い申し上げます。


おごらない人

「ボクはね。」

渋谷駅のほど近くに古くからある立ち飲み屋で隣になった男性は、焼酎と氷の入ったグラスにぬるいホッピーを注ぎながら私に言った。

「今の仕事しっかりやれてると思うんスよ。」

彼は空になったホッピー瓶をグラスの上で逆さにしてピッピッとしずくを払いながら続けた。

「まあ、そんな大したことじゃないんスけどね」

10分くらい前から1人でこの店に来た私は、これまた1人で出来上がった彼の恰好の話し相手にされていた。

「でも一つだけ自信を持って言えることがあるんス」

私はチューハイをごくりとしながら横目で続けて、と促す。

「決して驕らないってことッス。これは絶対曲げてないス。就職してから自分に言い聞かせててここまで来れたんス。マジこれはみんなに言いたい。」

うん。

「俺は就職して、いろんな奴見てて分かったんス。人の言うことを聞かない、驕ったやつから落ちていく。マジ、人、謙虚にならないとダメッス。俺なんか鬼のように謙虚っす。」

鬼。

「それがみんな分かってなくて。何回俺が謙虚になれっ、先輩の言うことを聞けっつってもみんな分かんないんス。それで結局人間関係ダメにしてるんス。ほんとなんでこんな単純なことが分かんねえのか俺には分からないス!」

うん。タバコを一服。

「俺は学歴とか気にしなくて。俺のファンデーションは高校にあって。そこなんだと思うんス。学歴とかそういうの気にするからダメになるんス。俺は分かってるんス」

うん。ファンデーション。

その後、ファンデーション話にしばらく付き合って、私は二杯目のチューハイを飲み終えたところで退散することに。そのそぶりを見たところで彼は慌てて私に言った。

「いやーすんません!話に付き合ってもらって。楽しかったです。でも兄さん、全然飲んでないッスね!(笑)おれ、出します」

「うわー、いいですよ。…おごらないで。そういうのよくないんで!」

「いやいやいやいや、兄さん、それじゃあ俺の気が済まないんで!たのんます!俺のプライドが許さないんス!」

結局、徹頭徹尾おごられっぱなしで私は店を後にした。

「謙虚さ自慢」がナチュラルに抱える恐るべき自己矛盾の罠に陥った男の話である。