warterproof

職場の60歳になる、よき先輩社員が声をかけてきた。

「四万十川ちゃん、四万十川ちゃん。」

「なんでしょう。」

「これ。これいくらすると思う?」

腕を差し出す。布のバンドの腕時計だ。見たこともないメーカー名が記されているし、文字盤に何の変哲もなく、お世辞にも高そうには見えない。しかし意外なところにその時計の価値を上げる特徴があるのかもしれない。そこの辺りも勘案して、

「うーん、4800円くらいでしょうか?」

ブー!

よき先輩社員はしたり顔で私に不正解の旨を言葉と顔であますところなく伝え、、ニコニコしながら言ってきた。

「980円でした!」(へー!)「しかも10気圧まで耐えれるらしいんだ。」

そりゃすごい。

「で、10気圧って何?」

「いや、気圧の単位で測るって確か水の中のことだと思いますけどね。」

「水なの?」

「ええ、たぶん」

よき先輩社員はうーん、と悩み始めた。

「どうしたんですか」

「いやね、水につけちゃいけないって書いてあったから」

説明書を見せてもらうと確かにその通りだった。10気圧まではいけるけど、水につけてはいけないらしい。何に使うんだ。その耐久性。先輩社員の肩が心なしか元気なく下がった。私は励まそうと、検索技術を駆使して下記の言葉をかけた。

「大丈夫ですよ!地球の空気が10倍重くなってもその時計は生きてるんですから。地球の気体が全部ラドンになっても大丈夫です!」

先輩社員の顔が少しだけ明るくなった。いいことをしたと思う。


腐らせた

私、「腐らせた」という企画をやっているだけによく物を腐らせるのですが、一番腐らせたくないものといえば、肉もですが一番は豆腐でしょう。

たっぷりと水分を含んだ豆腐を冷蔵庫でじっくりじっくり一ヶ月腐らせると、それはそれは大変な臭いになります。

白くて無表情の凛としたあの姿はもはや見るかげもない。双肩をくずし身体中にメッシュを入れ、うつろな体でこちらに目を向けてくる。そしてとびのくほど生理に訴えかける臭いを放つ。あの白い体のどこにそんな力があったのだろう。その落差はまるで「下妻物語は実はね、ゴスロリの深田恭子が、映画のラストでヤンキーに感化されて改心して、小作農になるんだよ。」って聞かされるのと同様のショックと悲しみを私にもたらすのだ。

でも、ちょっと脳幹あたりがゾクゾクするからみなさんもおためしあれ!



自分の印象

週末は実家に帰省していた。

晩ご飯を食べ終え、まだ談笑している両親を置いて風呂に入る。
自分の部屋の寂しげで暗いユニットバスに比べ、家の風呂は広い。思わず「バフー」と声が出てしまう。

風呂で行う一通りの作業を終え、さっぱりとして風呂を出た。リビングまで戻るとまだ両親が談笑しているのが聞こえる。思わず戸の前で立ち止まり、盗み聞きをしてしまう。

「あの子は本当に勉強をしない子じゃったねえ。」

「ほうじゃのう。」

どうやら私の昔話をしているらしい。いっそう入りづらい。

「高校までは何もしなくてもそれなりの成績を残しとったけど、さすがに最後は落ちこぼれましたねえ」

「ほうじゃのう。」

確かに落ちこぼれて一浪したが、余計なお世話である。

「あと」

まだあるのか。

「セロハンテープが好きな子じゃったねえ」

なんだそれは。

「夏休みの工作は全部セロテープばっかりじゃし、一人暮らししとるときに破れたズボンも全部セロテープで補修しとったしねえ。」

確かに事実だが、それでセロハンテープが大好きな子になるのか。

「ようセロテープ食べとったしのう」

分かった!確かに俺はセロハンテープ大好きな男だった。確かにセロハンテープは甘くておいしかった!素材は樹脂だから健康の問題もそんなになかった!だから、もうこれ以上言わないでくれ!

ガチャーンとわざとらしく音を立てて戸を開け部屋に突入すると、両親はにこやかに他の話題へと移行していった。


名言3

テニスをしたければラケットを持てばいいじゃない。

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こういうのは圧倒的に古いですね。すみません。



名言2

ドライアイスがなければ薪を燃やせばいいじゃない。


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