みどころ その4 高速で移動する大仏

これが有名な鎌倉の大仏である。実は、私は鎌倉に来るのは2度目だが、今回初めて間近からそのご尊顔を拝見させていただいた。

前回は、友人が「見る価値はない」としきりに言うので、大仏のない鎌倉なんて、蟹のいない「さるかに合戦」みたいなものではないか、と反論するも、「かにがいなければ争いは無かった」と論破され、渋々断念した。

初めて見てみた大仏様は、やや占いの得意な老婆に似てはいるものの、堂々とした風格を備えたいいお顔であった。屋外の像にありがちな鳥の糞被害も見たところでは無く、清潔感すら感じる。おそらく糞の清掃を定期的に(また頻繁に)しているのだと思うが、神々しさとはこういう地道な努力から生まれるものなのだろう。

しかしこの立派な大仏様、裏から見るとこんな感じである。




大仏様の背後には噴射口みたいなのがあった。神々しさとは逆ベクトルにずんずんと進むこの構造を不思議に思って近くにいたお坊さんに聞いてみたところこう説明してくれた。

「大仏様がお怒りになったら、この噴射口から激しい炎を放射し、その反動で海に向かって一直線に進まれます。」

周囲の建物をなぎ倒して海に沈む大仏様。ああ。神々しい。疑って申し訳ありませんでした。

可動式の大仏様とは現代の我々だけの妄想ではないのである。鎌倉時代からその幻想は形としてあった。そんな事実を教えてくれる大仏様はやっぱり文化財だ。ありがとう。大仏。

#

話は変わるが、大仏様を堪能していたところ、下の写真のような一団がいた。



皆一様に同じ帽子をかぶり、(写真には写っていないが)同じ保険会社の袋を抱えて歩いている。大仏様、どうぞこういう間違った方向に仲のよさげな一団をなぎ倒してくださいませ。ほら、仏前で帽子を脱いでないし。

#

あと、鎌倉大仏の近くにある「長谷寺」も素晴らしいところだった。巨大な十一面観世音菩薩のたたずまいは実に荘厳で、ひれ伏してしまいそうになった。

この十一面観世音菩薩のすぐ近くに、長谷寺ガイドがあった。像にいたく感動してしまった私は思わず手に取る。



「ハロー。」

フレンドリーにもほどがある。せっかく真っ当に感動する気になっていたのにこの仕打ちである。もちろん仏像に親しみやすくするという努力はとても尊いものだが、ここまで我々の近くに来なくてもよいのではないだろうか。

なお、私はこういうフレンドリーな英語を読むと、どうしても裏でマイケル・ジャクソンの翻訳口調で訳してしまう。

やあ、全国のチルドレンたち!ボクはJu-ichimen Kanzeon-Bosatuさ!ンフー!ボクは11個も顔を持ってるんだ。想像できるかい?どうだい?

共感していただけなくても結構です。

次へ
特集のページに戻る

Web冷え汁へ戻っちゃう!