■登る前から休憩所 さて、気を取り直して日本ピラミッド「葦獄山」の山頂の巨石群を目指そうとした途端、山道の入り口にさっそく休憩所があった。
まだ登り始めてもいないが、休憩所を見れば休憩したくなる。人間の摂理である。
残念ながらこの休憩所には特に何も売っていないようだ。本物ピラミッドの前にはケンタッキーフライドチキンがあるが、ここにはない。そういう面でも本物と差を付けられてしまっている。
でもいいじゃないか。鳥の皮がなくても木の皮などを食えばいいじゃないか。ナチュラルなテイストが僕らを待っている。
異常な湿度の室内は椅子と机のみのシンプルな構成。ガランとしている。当然誰もいない。たぶん、ここで「世界初!逆立ちしながら全身に漆を塗る」などの偉業を成し遂げても、100%ギネスに申請されないだろう。
室内を見渡すと登山者の記帳表があった。こんなところにも人が来ているんだ!と新鮮な驚き。
「ねりわさび モゲラ」
何を伝えたいのか。よく分からないけど、
共感したくなる衝動。ホロニックさんも来た日本ピラミッド。
それだけで救われる気がする。他にもこのノートで選挙活動をされている方など(全く報われない選挙活動だ)、ちょっとどうかなと思う人がいっぱい来ていた。
さらに部屋の奥に歩みを進めると、、謎の巨石群の手がかりとなる写真が飾られていた!
いや。
自信を持ってスフィンクスじゃないです。
気をとりなおした途端、これから目指す目標に対して大きな不安を抱く結果となってしまった。こんなことだと、
・小川を指して
「これなんだ?完全にナイル川です!!」
・片方だけ落ちているサンダルを指して
「これなんだ?完全に地底生物です!!」
・アリの巣を指して
「これなんだ?完全にブラックホールです!!」
とか言い出してしまいそうである。山道入り口にあった「念ずれば花開く」とはこのことだろうか。スフィンクスだと思えばスフィンクスになる。自分の家の狭いユニットバスも武田信玄の隠し湯になる。激しい無茶が花開く。
■邂逅!日本ピラミッド 気分も沈んで足も重い。葦獄山の山頂まで1600mの道をトボトボと登る。
道中、青々とした生命力に満ちた草木の歓迎を受ける。別の言葉で言うなら、まったく処理されていない腋毛のような力強さ。それ以外になにもない。
無骨な枝が両脇から道にはみ出し、その両端をスイッとか細い線のくもの巣がつなぐ。気付かずに口の中にくもの糸を入れてしまう。それをペペッとつばに絡めて吐き出しながら、
「ああ、くもの巣に栄養があれば、こうして歩いているだけで自動的に食事が摂れるのに。」
などと思いながら歩く。チャップリンも、こういう装置を考え出していれば機械の歯車に巻き込まれた生活に対する毒を吐かなくてすんだのかもしれない。
そうして1時間以上歩いただろうか。空の雲が近くなってきたかな、と思ったところで、ようやく一つ目の見ものがやってきた。
鷹岩だ。
別アングルから撮った一枚。
あー、いいよー、いいよー
私の目や写真の腕が悪いのだろうか。どう見ても鷹には見えない。なんとなく、上の写真はあの鼻の大きめな有名AV男優に見えなくもないが、この岩がここに置かれた時期から彼がいることのほうが神秘である。
まさに、念ずれば、の境地であろうか。ここからすぐに葦獄山の山頂である。下図のような道のりで、巨石群が続く。 図右側の葦獄山の山頂から左隣の鬼叫山に向け、怒涛のような巨石群が私に襲い掛かる。日本ピラミッドに全部の巨石が集まってるわけじゃないんだ!という激しいがっかり感をよそに、ここから岩マニア垂涎のオンパレードが始まる。
方位石。岩の切れ目が東西南北をあらわしたものらしいが、現在の東西南北とは30度程度違うとのこと。ちなみに、切れ目ではなく岩そのものが方位を指し示しているという説もあるらしい。
丸みをおびたスリットにちょっとドキドキしたりする。
方位石を下から見た図。リアルクレバス。ちなみにこれがこのページ冒頭で出てきた「スフィンクス」である。頭よりずーっと前に胴が続いているようにみえます。スフィンクスにしては胴が長すぎじゃないですかね。
ドルメン(供物台)。机のように重ねられた岩で、この上に供物を置いた、との説明があるが、机というよりはR2D2のようなずんぐり感。 これも供物台。平滑な岩が急斜面に水平になっている。まあ、確かに不思議といえば不思議である。
台の上には小鉢が置かれ、合計342円入っておりました。とりあえず100円を失敬。
鏡岩。こちらは不自然に垂直に切り立った巨大な岩。この説明が、 こんな感じ。光通信装置なのだそうだ。素直にのろしとかを使ったほうが伝送効率がよさそうな気がする。
■とまあ、こんな感じだ。 岩オンパレードでおなかいっぱいになったところでようやく巨石群は終わった。
この巨石群。確かに人間の手が及んだと言われるとそうかもしれない、と思わせるような造形もある。裏を返せば自然がやったんだよ、と言われるとへー、そうなんだ。と思うだろう。
葦獄山の山頂にはこんな看板が立てられていた。
国家権力も大変だ。
推論となるのも致し方なし。
看板をじっくり読み、歩いた疲れだけの理由で出たわけではないじっとりとした汗をそのままにする。呆然と山頂にたたずんでいると、ぽつりぽつりと大粒の雨が降り出した。
さあ、帰ろう。山頂からふもとまで1600m。
古代へのロマンをくすぐる日本ピラミッド。
ほんのりとした神秘性と、圧倒的な眉唾感の共存するこの山。むしろ、これが日本ピラミッドだ!と浮かれていた人やそれにあやかった私のような人間たちの思いのほうが「遺跡」となりそうなこの山。
皆様も是非その身につまされそうながっかり感をゆるりゆるりと堪能していただきたい。
なお、ゾクゾクする感動なら、この日本ピラミッドのすぐそばにある「蘇羅比古神社」をお薦めいたします。天を向いた狛犬の待つ底知れぬ寒さをたたえた神社です。
場所:庄原市本村町
特集のページに戻る
文責:四万十川篤彦(Web冷え汁)