地球のがっかりしかた
第1回 俺は蒲郡のファンタジー
男のファンタジーも兼ね備えています。

誰にでもがっかりするときはある。

醤油とソースを間違えたらがっかりだし、初めての夜に楚々と服を脱いだ彼女がブラジャーを裏返しに着けていたりしたらがっかりだ。私の経験では、なんとなく暑いからといって冷やし中華を頼んだら、具がきゅうりと卵だけだったことがある。そんな麺料理は「中華」を冷やすのではなく、僕の心を冷やした。

でも、こういうがっかりって後で思い出してみると、そこはかとなく下卑た含み笑いが腹のそこから湧き上がってくる。そういうのって意外に心地よい。ハワイだプーケットだパリだ。そんなきらびやかな旅に飽きた人は歪んだ笑いを求めて、がっかりしに遠出してみるのはどうだろう。がっかりは両手を広げてみんなを待っていると思う。たぶん。

そういうわけで、連載企画、地球のがっかりしかた、始めます。なお、この企画、途中で頓挫して皆様にがっかりしていただくということも織り込み済みである。その点ご了承いただきたい。



蒲郡にあるファンタジー

万博で沸く愛知県。今、日本で一番元気な県として取り上げられることも多い。

そんな愛知。喧騒でうずまく万博会場や、名古屋の街から離れると、街はまた違った様相を見せてくれる。

蒲郡(がまごおりと読む)は、そんな愛知に位置する情緒あふれる海の街である。この街にファンタジーを夢見ることが出来る「蒲郡ファンタジー館」という施設があると聞いた。

いつまでも夢を追い求める筆者としては、もはやいてもたってもいられず、無理やり訪問してきた。

蒲郡駅。一目見てこれを読める人がいたら尊敬したい。
親に子供が刺さっている。現代の歪んだ親子関係に警鐘を鳴らすつもりかもしれないが、とりあえずここは親に子供が刺さっている、その事実だけにがっかりを見出していきたい。
ファンタジーその1 蒲郡駅のトイレ

蒲郡駅はJR名古屋駅から東海道線に乗って約1時間。

蒲郡駅を降りる。ほのかな潮の香りに、海のある街に来た時の独特の興奮が喚起させられる。

とはいえ、まずは長旅でお手洗いを我慢し続けたため、クネクネしながら標示に従い、広々とした駅前のロータリーを横切りって公衆トイレに行く。開放のひととき。

でも、トイレについてみると、なんかピクトグラムが妙だ。そして、落書きも妙だ。駅を降りたときから感じる玄妙な雰囲気に惑わされながら、地図を頼りに一路蒲郡ファンタジー館へと歩を進める。
 

何か深刻な事情でもあるのかもしれないが、ポップなフォントがそれを打ち消している。
駅前に止めてある車にはCD-ROMがぶら下がっていた。何をかは分からないが、何かを防ぎたいという気持ちはひしひしと伝わってくる。
蒲郡ファンタジー館はちゃんと地図にも載っているけど・・・。  →
ファンタジー館より気になる名前の寺もあったりする。


これが僕にファンタジーを体験させてくれるファンタジー館か!
ファンタジーその2 お出迎え

気を取り直して蒲郡駅から歩くこと15分。海沿いに奇妙なたたずまいの建物が見えてきた。これが蒲郡ファンタジー館である。
 入り口からして実に幻想的である。これから私をめくるめくファンタジーの世界にいざなってくれるのだろう。併設店舗が「えびせんべいの館」というのがやや不安をあおるが、気を取り直して、「歓迎」の文字につられて入館してみる。

と、突然今にも誰かに殴りかかりそうな木像に出迎えられる。よく見ると下半身がモロ出しである。ここウブな私は「キャッ」、と頬を赤らめてしまうが、冷静に考えてみると、なんでモロ出しな人に出迎えられなくてはならないのか。

がっかりだ。

そんな私を見透かしたかのように、後ろには艶然と微笑みながらポーズをきめる女性像が。なんとなく見下された感じがして心地よい。

なんともファンタジックな演出に恐れ入ってしまう。

歓迎されて中に入ってみると・・・

突然、モロ出しの人に殴りかかられる。


なんとも美しい女性の姿。これが全て貝で出来ている。
ファンタジーその3 貝まみれ

さて、この蒲郡ファンタジー館。何があるのかを端的に言えば、「全世界110カ国から集めた大小様々な約5000万個の貝でできたオブジェの数々」である。

5000万個という数を誇張と思うことなかれ、一歩踏み入れるとこれでもか!というほど貝だらけである。おそらくあなたが一生で見てきた貝を軽く凌駕する数が、ここに収蔵されている。

左写真の女性像も、その表面の全てがツブツブの貝で覆われている。自分の恋人がこんなのだったらさぞがっかり・・・、いや、夢見心地であろう。ツブツブしたさわり心地も小気味いいでしょうし。

では、以下、このファンタジー館に展示されている物のごく一部をどどっと見ていっていただきたい。

たぶん2メートル近くあるこの像も全て貝で出来ている。
貝で作った花びら。言葉にしたら、なんとなく響きが卑猥になってしまった。
あ、かわいいお魚さんだ。
でも、全部貝。
竜宮城を模したステージ。圧倒的な広さのフロアに埋め尽くされる貝たち。竜宮城以上の何者かになろうとしている。
場内の雰囲気はムーディーで夢見心地。なのか。



ファンタジー館のクライマックス、ノーチラストンネル。天井から床までびっしりと埋まっていて、逃げ場がない。
ファンタジーその4 貝トンネル

場内は驚くほどに広い。そして日本の業を深く感じさせるような独創的なオブジェの数々にはもはや畏怖すら感じる。しかしそんなオブジェの洪水の尾張に差し掛かったところでさらなるクライマックスが訪れる。

鮮やかなオレンジ色のヒオウギや、オウムガイ, レインボーウニで出来た「ノーチラストンネル」のおでましである。

左の写真を見ていただいても分かるように、オウム貝が恐ろしいほどの密度で飾られている。

ファンタジーか、といえば少し悩みながらも「うん」と答えるが、どちらかというと「悪夢」のほうのファンタジーのような気がする。見る人が見たら狂気に吐き気をもよおすのではないだろうか。ファンタジーを期待したところに来るカウンターパンチ。でも、こういう打ちのめされ感もファンタジーだ。(適当なことを言ってます)

ノーチラストンネル天井。こんなのがびっしり。
こんなの。オウム貝は生きる化石と呼ばれるが、こんなにびっしりあるとこちらが石のように固まってしまう。

ただの観光地にとどまらない、という意識をひしひしと感じさせてくれる「蒲郡ファンタジー館」。観光、とかアートとかを軽やかに飛び越えたその姿、是非肉眼で体感して、ファンタジーに打ちのめされていただきたいと思う。

住所
〒443−0031
愛知県蒲郡市竹島町28−14
営業時間 9:00〜16:00(入館受付終了)
定休日 年中無休


おまけ



ミステリーツァーご一行様もいらっしゃっていました。ツァー。


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文責:四万十川篤彦(Web冷え汁)