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音楽に合わせて着物を着ながら踊る「着付け舞」の世界 ~中森明菜「デザイア」編~

みなさんも人生で一度は行ってみたいライブというのがあるのではないでしょうか。

私が人生で一度だけでも行ってみたいのは「着付け舞」のライブです。

おそらくほとんどの方はご存知ないのではないのかと思いますが、この「着付け舞」というのは音楽に合わせて着物の着付けをしながら踊る、というものです。想像はつきますでしょうか?

まずはイメージを掴んでいただくためにこちらをご参照ください。(こちらは一度帯を外してから別の帯を付け直す流れです。)

ただでさえ難しい着付け。これを音楽に合わせて踊りながら短時間でやり通す、ってんですからそれはもう大変な難易度なわけです。「なぜ音楽に合わせて踊りながら服を着る必要があるのか?」という根本的な疑念は浮かぶとは思いますが、ひとまず「なんだかすごいぞ」ということだけはご理解いただけるかと思います。

私は10年くらい前にこちらのサイトで着付け舞を知って以来、ずーっとライブを見に行きたいと思っていました。しかし、一体どのようにこの着付け舞のライブ情報を事前に入手できるのか、そもそも、ライブが開催されたとして、女性が服を着る姿を私のような男が見てもよいのか、全く分からないまま10年が過ぎてしまいました。

そんな昨日。久々に着付け舞の動画をYoutubeで検索していたら、それはもう決定的な映像を発見してしまいました。私は今興奮しています。この映像を見ることができたことに。そしてここでそれを紹介できることに。

以下の動画は10分弱あります。その時間の長さに怖気づかずに、最初から全て見るべきと思います。

以下、順にご紹介いたします。

動画は二幕構成です。一幕目のミュージックは氷川きよし「夢太鼓」。

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9人編成で始まります。

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着物の色ごとに着付け舞の内容が異なることが分かります。

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それぞれがそれぞれの動きをするので、どこに目を向ければいいのか分かりませんが、たぶん着物を着る方向に向かっています。たぶんですが。

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黄色の方と青の方がコラボレーションします。帯をグルーっと。

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一部まだの方もいますが完成です。

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優雅に退出

続いて第二幕です。私がショックを受けたのはここからです。一幕が終わって暗転後、軽快に中森明菜の「デザイア」のイントロが流れ、否が応にも期待が高まります。

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若い女性と、はだけた(?)着物姿の女性が出てきます。

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右の女性がゲラッゲラゲラッゲラッと歌い始めます。かなり本気の歌いぶりです。少しモノマネも入っているので、鑑賞者はほのかな温泉旅館感を感じているはずです。横では着付け舞をやられている方が、もぞもぞとしています。

着付け舞、我々にはもぞもぞしているように見えますが、よく見てみると迷いのない手つきで帯を締めておられます。我々がちゃんと着付けを理解していないからもぞもぞしているように見えるのです!着付け経験者の私の妻などは、「すごい・・・ちゃんとやってる・・・」とビックリしていたのですから。

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Aメロ~Bメロ途中まで、冷静に着実にもぞもぞしておられます。

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局が盛り上がったところ?で白い帯がボーン!

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赤い帯もボーン!

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歌っている方、「デザイア」のサビ最後の「なーんーてね」の後のいわゆる「ハーどっこい」部分も、ちゃんと踊っています。問題は、この動画では右端が切れているということです。あくまで着付けされている方が主役である、ということでしょう。

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1番の終了にピッタリのタイミングで赤い帯が綺麗に締められました!見事な技術です。

この後デザイアの2番が始まり、さらなる着付けが展開されます。ここはもう、見て下さい。これまで演歌などに限定されていた着付け舞の曲がダンサブルなポップミュージックになった点、そして生歌。少なくとも私がこれまで見た中でもエポックメイキングです。かつ、演者(着付者?)のよどみない流れは大変な賞賛に値するでしょう。

それにしても、この着付け舞。「服を着る」という日常生活のいわば裏の動作を、他者が見て喜べるエンターテイメントにしようとするその心意気、そして、どうしてもモゾモゾとした動作が多くなりがちなところを、敢えて「舞」と言い切る勇気。本当に感服します。

大変下品な比較になり申し訳ありませんが、世にはストリップなど服を脱いで男や一部女性を喜ばせるエンターテイメントがありますが、着付け舞はこれに概念として真っ向から対抗しています。服を脱ぐ、という生き物の原初に戻る行為に対し、服を着るというのはまさに文化、文明を獲得していくこと。その獲得の過程を美麗な音楽と振りによって魅せる。これが文明人としてのエンターテイメントにならずしてどうする!とも思います。

ぜひ皆様もこれを機会に興味を持っていただければと思います。

なお、世界中、「服を着る」ことをエンターテイメントにしようとした民族はいないのではないでしょうか。今思い巡らせてみても、郷ひろみがジャケットを一瞬脱いで着るアレしか思い出せません(ジャケットプレイと呼ぶそうです)。

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「世界」とか風呂敷を広げた割に日本にしか目が行っておりませんが。

そういうわけで、服を着ることをエンターテイメントに高めた事例、皆様からの情報をお待ちしております。